勘違い一夜から始まる極甘策士なドクターの激愛婚〜偽装結婚は旦那様の甘い罠でした〜
「さすがにやめてくださいね」
「わかってるわかってる。冗談だよ」

 笑っている彼に〝冗談は顔だけにしてください〟と申したい。下手なことはしないで、きちんと製品を紹介してほしい。

 ……という本音は心の中に留めて、表面上はにこりと微笑んでおく。これが私が穏便に生きていくための処世術だが、あまりにも目にあまるときは物申すつもりだ。

 とにかく、私は誠心誠意を込めて営業しないと。

 受付を済ませると事務の方に案内され、野島さんに続いて応接室に入る。ソファに座って待っていると、しばらくしてスクラブ姿の眼鏡をかけた男性と、白衣姿の男性ふたりが現れた。

 さっと腰を上げた私たちは、麗しい微笑みを湛える白衣を纏ったドクターを見て目を見開く。

「すみません、お待たせしました。ご足労いただきありがとうございます」

 にこやかに挨拶をしてきたこのドクター、実は私は初対面ではない。痣のレーザー治療をしているとき、研修医だった彼と何度か接して、印象的だったから覚えているのだ。

 ふわっとしたマッシュショートの髪に、優しげな目もとと綺麗な肌が魅力的な顔。当時からものすごいイケメンだと思っていたけれど、あの頃より風格が出てさらに素敵になっている。

 あの研修医さんが、立派なお医者様になっておられる……! と、感動したのもつかの間、さらに驚くべき発言が飛び出る。

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