勘違い一夜から始まる極甘策士なドクターの激愛婚〜偽装結婚は旦那様の甘い罠でした〜
芹澤(せりざわ)先生……! こちらこそ、ご多忙のところお時間をいただき、ありがとうございます」

 とっても腰の低い野島さんが発した名前に、私は呆気に取られた。

 嘘……立派なお医者様どころじゃなかった。この彼が、さっきも話していた例のスーパードクターじゃない!

 私が知っているのは芹澤という名前だけで、顔はわからなかった。まさかあのときの彼が、こんなに大物になっていたとは……!

 野島さん以上に驚きながら、おふたりに丁寧に挨拶をして名刺を渡す。

「まさか芹澤先生自ら来ていただけるとは。光栄です」
「ちょうど手術が終わったところだったんで。最新機器、気になるじゃないですか」

 同じく感動しているような野島さんに、彼はやわらかな笑みを浮かべて返した。

 よく助手を務めているという眼鏡をかけたドクターの須賀(すが)先生も、ややあきれたように笑う。

「先生を求めてひっきりなしに患者さんが来るから、息抜きしたいらしくて」
「シェーレさんの医療機器はどれも精度が高いから楽しみなんですよね。最初に驚いたのはナイフだったな。皮膚移植するときにものすごくやりやすくて、今も愛用しています」
「愛用って、そんな自前のナイフみたいに」

 気心が知れていそうな須賀先生が即座にツッコみ、和やかだけれど頼もしいオーラを引き連れて彼らもソファに移動してきた。私はとても感慨深い気持ちで、治療をしていた高校三年の頃を思い返す。


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