腹黒王子の愛は、激甘でした。

21話 1番のかたち

颯汰先輩に教えてもらった校舎の裏にある庭へ走って行ってみると、そこには静かに目をつぶってベンチに腰かけている廉先輩がいた。

「廉先輩っ!」

私が思わず勢いのままに声をかけてしまうと、廉先輩は驚いたように目を見開いて、

「咲良ちゃん⁉どうしたの?」

といつものように返してくれた。

「さっき廉先輩が暗い顔してたので…何かあったのか心配で」

(もしかしたらおせっかいかもだけど…廉先輩が悩んでるなら力になりたい!)

私はそう決意を込めて廉先輩に聞いてみた。

廉先輩はさっきよりも大きく目を見開かせている。

そして眉毛を下げて困ったように笑った。そして

「あはは…体育祭でバテちゃったのかも…」

「心配かけてごめん。声かけてくれてありがとね」

と優しく言う廉先輩に私は違和感を感じた。

(いつもだったらもっと明るく笑顔で言うのに…)

今の廉先輩の笑顔は無理して笑顔を作っているような、笑顔の裏に影があるような気がした。

「あの…無理はしないでくださいね!」

私は廉先輩に想いが伝わるよう真剣に言う。

そんな私から廉先輩は気まずそうに目をそらした。

「私、明るくて優しい廉先輩が大好きです!廉先輩は笑顔が1番ですよ!」

私は廉先輩を励まそうと明るく言った。

すると廉先輩は、

「俺の笑顔が1番、ね…」

と私の言葉を反芻するようにゆっくりと言った。

そして廉先輩は

「俺に1番なんて言葉似合わないよ」

と困ったように笑った。

その表情にはさっきのレース中にも見た何かを諦めているような悲しさが滲んでいるように見えた。

私はあまりにも切なく笑う廉先輩の表情を見たくなくて

「1番って1つだけじゃないと思います!」

と、全力で言った。

「もちろん勝負には順位がありますけど…」

「目に見えない“1番”もあると思うんです!」

「少なくとも私は廉先輩のすごい所、ちゃんと知ってます!」

自信満々に言い切った私を見て廉先輩は驚いたように固まってしまった。

そして少しの間があった後、あははっと廉先輩が声を上げて笑い出した。

「俺にそんなこと言ってくれるの咲良ちゃんくらいだよ…!」

「それにめっちゃ自信満々で言うし…!」

「…っ、え!?」

廉先輩の言葉でハッとした。

(私、勢いのあまりめっちゃ恥ずかしいこと言ったかも!?)

じわじわと頬に熱が集まってくる。

「す、すみません…廉先輩に1番が似合わないなんて思ってほしくなくて…」

「ちょっと、必死になりすぎちゃいました…」

私は恥ずかしくて視線をそらしながら言うと、廉先輩はため息をこぼした。

(どうしよう…!?怒らせちゃったかな…)

私は不安になってきて指先をぎゅっと握って俯いた。

すると廉先輩の

「…優ってば、そういう所ほんとにずるい」

という言葉が聞こえた後、廉先輩の手がぽん、と私の頭に触れた。

私は驚いて顔を上げると優しい顔をした廉先輩と目が合った。

「優のおかげで元気出た」

「…ありがとう」

そう言った廉先輩の表情にはさっきまでの影はなく、爽やかで柔らかい笑みを浮かべていた。

そんな廉先輩の様子に胸の奥がきゅっと締めつけられた。









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