腹黒王子の愛は、激甘でした。
31話 あと一歩
あの日からも、私は颯汰先輩を避け続けていた。
理由は分かってる。
分かってるのに、どうしたらいいか分からない。
(このままじゃダメなのに……)
そう思って鞄を持ち、足早に教室を出ようとした、その時だった。
「優」
名前を呼ばれて、心臓が跳ねた。
(……っ、)
ゆっくり振り返ると、そこには颯汰先輩が立っていた。
逃げたい。
でも、逃げちゃダメだ。
そんな気持ちが頭の中でぐるぐるする。
「……ちょっといい?」
優しく問いかけられて、私は一瞬迷ってしまう。
でも——
(もう、ちゃんと向き合わなきゃ)
小さく息を吸って、
「……はい」
と頷いた。
人の少ない廊下の端まで移動する。
颯汰先輩と向かい合った瞬間、胸がぎゅっと苦しくなった。
(やっぱり……近いとダメだ)
顔が熱くなっていくのが分かる。
でも、今は逃げないって決めた。
「……最近、避けてるよね」
その一言に、胸がドクンと大きく鳴る。
やっぱり、気づかれてた。
「そんなこと……」
否定しようとしたけど、言葉が続かなかった。
だって、本当は——
(避けてるのは、事実だから)
ぎゅっと手を握りしめる。
どうしよう。
なんて言えばいいのか分からない。
「俺、何かした?」
その言葉に、ハッと顔を上げた。
違う。
颯汰先輩は何も悪くない。
悪いのは全部——
「……違うんです」
気づけば、そう口にしていた。
「先輩が何かしたとかじゃなくて……」
声が少し震える。
でも、ちゃんと伝えなきゃ。
私はゆっくり顔を上げた。
颯汰先輩と目が合った瞬間、また胸が苦しくなる。
(ああ……やっぱり)
こんなにドキドキして、
こんなに苦しくなる理由なんて、
もう、とっくに分かってる。
「その……私が……」
そこまで言って、言葉が止まる。
——“好きだからです”
その一言が、喉の奥で引っかかる。
言いたいのに、言えない。
怖い。
もしこの関係が変わってしまったらどうしよう。
今みたいに、優しくしてもらえなくなったらどうしよう。
そんな考えが、一気に押し寄せてくる。
(……言えない)
唇をきゅっと結ぶ。
でも、このまま何も言わないのも違う。
颯汰先輩は、ちゃんと向き合おうとしてくれてるのに。
(私も……逃げちゃダメだ)
ぎゅっと目を閉じて、深呼吸を一つ。
そして、覚悟を決めて顔を上げた。
「……ちゃんと、話します」
自分でも驚くくらい、まっすぐな声が出た。
颯汰先輩の目が少し見開かれる。
「だから……少しだけ、時間ください」
今すぐは、まだ言えない。
でも、ちゃんと伝えるって決めたから。
逃げないって決めたから。
私はそう言って、ぎゅっと手を握りしめた。
少しの沈黙のあと、
「……分かった」
颯汰先輩は、短くそう言った。
その声は優しくて、責めるような色は一切なかった。
(よかった……)
胸の奥に張りつめていたものが、少しだけほどける。
思わず小さく息を吐くと、
颯汰先輩が優しくこちらを見ていた。
「待つよ」
その一言に、胸がぎゅっと締めつけられる。
(……ずるい)
そんな風に言われたら、
ちゃんと向き合うしかなくなる。
でも、不思議と嫌じゃなかった。
むしろ——
(ちゃんと、伝えたい)
そう思えた。
私は小さく頷いて、
「……ありがとうございます」
と答えた。
颯汰先輩は、少しだけ安心したように笑った。
その笑顔を見た瞬間、
また胸がドクンと鳴る。
(やっぱり、好きだな……)
心の中でだけ、そっと呟く。
まだ言葉にはできないけど。
でもきっと、もうすぐ——
ちゃんと伝えられる。
そんな予感が、胸の奥で静かに広がっていた。
理由は分かってる。
分かってるのに、どうしたらいいか分からない。
(このままじゃダメなのに……)
そう思って鞄を持ち、足早に教室を出ようとした、その時だった。
「優」
名前を呼ばれて、心臓が跳ねた。
(……っ、)
ゆっくり振り返ると、そこには颯汰先輩が立っていた。
逃げたい。
でも、逃げちゃダメだ。
そんな気持ちが頭の中でぐるぐるする。
「……ちょっといい?」
優しく問いかけられて、私は一瞬迷ってしまう。
でも——
(もう、ちゃんと向き合わなきゃ)
小さく息を吸って、
「……はい」
と頷いた。
人の少ない廊下の端まで移動する。
颯汰先輩と向かい合った瞬間、胸がぎゅっと苦しくなった。
(やっぱり……近いとダメだ)
顔が熱くなっていくのが分かる。
でも、今は逃げないって決めた。
「……最近、避けてるよね」
その一言に、胸がドクンと大きく鳴る。
やっぱり、気づかれてた。
「そんなこと……」
否定しようとしたけど、言葉が続かなかった。
だって、本当は——
(避けてるのは、事実だから)
ぎゅっと手を握りしめる。
どうしよう。
なんて言えばいいのか分からない。
「俺、何かした?」
その言葉に、ハッと顔を上げた。
違う。
颯汰先輩は何も悪くない。
悪いのは全部——
「……違うんです」
気づけば、そう口にしていた。
「先輩が何かしたとかじゃなくて……」
声が少し震える。
でも、ちゃんと伝えなきゃ。
私はゆっくり顔を上げた。
颯汰先輩と目が合った瞬間、また胸が苦しくなる。
(ああ……やっぱり)
こんなにドキドキして、
こんなに苦しくなる理由なんて、
もう、とっくに分かってる。
「その……私が……」
そこまで言って、言葉が止まる。
——“好きだからです”
その一言が、喉の奥で引っかかる。
言いたいのに、言えない。
怖い。
もしこの関係が変わってしまったらどうしよう。
今みたいに、優しくしてもらえなくなったらどうしよう。
そんな考えが、一気に押し寄せてくる。
(……言えない)
唇をきゅっと結ぶ。
でも、このまま何も言わないのも違う。
颯汰先輩は、ちゃんと向き合おうとしてくれてるのに。
(私も……逃げちゃダメだ)
ぎゅっと目を閉じて、深呼吸を一つ。
そして、覚悟を決めて顔を上げた。
「……ちゃんと、話します」
自分でも驚くくらい、まっすぐな声が出た。
颯汰先輩の目が少し見開かれる。
「だから……少しだけ、時間ください」
今すぐは、まだ言えない。
でも、ちゃんと伝えるって決めたから。
逃げないって決めたから。
私はそう言って、ぎゅっと手を握りしめた。
少しの沈黙のあと、
「……分かった」
颯汰先輩は、短くそう言った。
その声は優しくて、責めるような色は一切なかった。
(よかった……)
胸の奥に張りつめていたものが、少しだけほどける。
思わず小さく息を吐くと、
颯汰先輩が優しくこちらを見ていた。
「待つよ」
その一言に、胸がぎゅっと締めつけられる。
(……ずるい)
そんな風に言われたら、
ちゃんと向き合うしかなくなる。
でも、不思議と嫌じゃなかった。
むしろ——
(ちゃんと、伝えたい)
そう思えた。
私は小さく頷いて、
「……ありがとうございます」
と答えた。
颯汰先輩は、少しだけ安心したように笑った。
その笑顔を見た瞬間、
また胸がドクンと鳴る。
(やっぱり、好きだな……)
心の中でだけ、そっと呟く。
まだ言葉にはできないけど。
でもきっと、もうすぐ——
ちゃんと伝えられる。
そんな予感が、胸の奥で静かに広がっていた。