四神に愛され注意報
その日の夕飯は、ひややっこが選んだ白菜を中心にした鍋になった。
「鍋って楽でいいよね」
私がそう言うと、ねぎまが箸を振りながら大きく頷く。
「分かる!いっぱい食べれるし!」
「それはお前だけだ」
ひややっこが淡々と突っ込む。
鍋から立ち上る湯気の向こうで、にょろ丸が器用に具材を取り分けてくれている。
「こーちゃん、火傷しないように気を付けてくださいね」
「ありがとう」
こうして並んで食卓を囲むと、不思議な気分になる。
「あ、ねぎま。しいたけあげる」
「こーちゃん、嫌いな物も食べましょうね」
「うっ....」
「青龍の言う通りだ。もったいないお化けが出るぞ」
「怖くないし!」
私がムキになって言い返すと、ねぎまはニヤニヤしながら箸を振った。
「小さい頃はあんなにトイレ行くの怖がってたのに〜?」
「なっ……!」
思わず箸を止める。
「小さい頃はあんなに可愛かったのに.....お兄ちゃん泣いちゃうっ!」
わざとらしく泣き真似をするねぎまに、ひややっこが言った。
「何言ってんだ、朱雀。小春はいつも可愛いだろう」
「ん?」
「それはそう!」
「そうですね〜。こーちゃんは可愛いです」
突然三人にそんなことを言われて、私は固まった。
「え、ちょ……」
箸を持ったまま、言葉が出ない。
ねぎまは鍋から肉をすくいながら、当然みたいに頷いている。
カメ吉だけは黙々と食べ続けているので、目線で助けを訴える。
恥ずかし過ぎて穴に入りたい.....。
しかしカメ吉はというと、相変わらず落ち着いた様子で鍋の具材を口に運んでいる。
しばらくしてから、ゆっくりと顔を上げた。
「事実だ」
「カメ吉まで!?」
カメ吉は少しだけ首を傾げて私を見る。
「何か問題があるのか?」
「いや、そう言うわけじゃないんだけど......」
言いながら、私は視線を鍋に落とした。
ねぎまが腹を抱えて笑い始めた。
「ははは!全員一致!」
「ぐぬぬ……」
悔しくて、私は鍋を睨む。
その時。
にょろ丸がそっと私の器に具材を入れてくれた。
「はい、こーちゃん。白菜です」
「ありがとう……」
「あと、しいたけも」
「いらない!」
「栄養ありますよ?」
「いらない!」
即答すると、ねぎまがすかさず言う。
「まだ小春ちゃんはお子様なんだから好き嫌いあるのは当然だよ〜」
「お子様じゃない!」
「じゃあ食べれる?」
箸でしいたけをつまんで、目の前に差し出してくる。
(ねぎまの方が一枚上手だった.....)
しいたけは食べたくない。でも、ここで食べないとお子様認定されてしまう....。
私は目の前のしいたけをじっと見つめた。
ねぎまは完全に勝ち誇った顔で、箸を差し出したままニヤニヤしている。
「ほらほら〜?」
(くっ……)
私はぎゅっと目を閉じた。
ぱくっ。
「……」
もぐ。
もぐもぐ。
……あれ?
思ってたより――
「……食べれなくはない」
だけどその瞬間、よく考えたらこれって間接キスかもしれないと気づいて、何だかますます恥ずかしくなった。
にょろ丸は何故か肩を震わせて涙ぐんでいた。
「ちゃんと食べましたねぇ、えらいえらい」
ぽん、と軽く頭を撫でられる。
間接キスのことは......まぁいいや。
今さら恥ずかしがっても遅いし。
< 7 / 7 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:3

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

生き神様

総文字数/1,346

ファンタジー1ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
私は生まれてから一度も、この鳥居の向こうへ行ったことがない。 山を守る月峰神の声を聞くことができる、唯一の『生き神』だから。 ――それなのに。外の世界を見てみたいと思ってしまった。 「私、この山もこの土地も好きだよ。でも……」 本作の主人公。神の声をキくことのできる生き神として神社の境内に閉じ込められている・アンズ。 「お前が決めたのならそれで良い」 アンズの唯一のお友達。アンズに色んなことを教えてくれるが、彼も外に出たことはない・カタクリ。 「月峰神とは一体なんなんだ?」 たまたまこの山にやって来た旅人。なぜか神社から出られなくなってしまった・伊織。
ことほぎの祈り

総文字数/15,203

恋愛(純愛)5ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
私———桜木琴葉には、両親が勝手に決めた許嫁がいる。 霊能系の界隈では知らない者がいないとされている家系『土御門家』 私の家はその土御門家に代々仕えていた。 そして、許嫁になったのは幼馴染のチャランポランな男の子!? 両家の意向で、『高校生になったら同居させよう!』ということになったんだけど……。 「琴葉ちゃんの可愛い可愛いお顔見せて?こんな可愛いお嫁さん持てて俺は幸せ者やわ〜!」 ヘタレなチャランポランで夢は超人気インフルエンサー。こう見えて陰陽師としての腕は折り紙付き・土御門保名。
鏡花水月

総文字数/72,939

恋愛(キケン・ダーク)24ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
かつて泥沼の戦場を共に駆け抜けた幼馴染の紫乃、平八、桃李、重治。 数年後、母星から遠く離れた地球で平和な日常に戻り中学生として暮らす紫乃は、かつての戦友達と偶然の再会を果たす。 しかし、日常に馴染もうとする桃李や重治とは対照的に、平八は国への復讐を誓う「テロリスト」となっていた! 「俺は腐った奴らを壊して、あいつらの無念を晴らしたいだけだ」 紫乃の幼馴染。野性味溢れる鋭さを持つ、ぶっきらぼうで不器用。桃李との仲の悪さは昔から健在だった(喧嘩するほど仲が良い)。お化けが怖くて幼い紫乃に泣きついたという可愛い過去もあるが、現在はテロリスト・平八。 「時代が俺に追いついて来ちゃったか〜」 同じく紫乃の幼馴染。常に情熱的で斬新な思いつきを語るが、落ち込む時にはとことん落ち込む浮き沈みの激しい性格。平八との仲の悪さは昔から健在だった(喧嘩するほど仲が良い)。気前が良いせいで懐が緩いことを咎められるのが最近の悩み・桃李。 「郷里から苺を取り寄せた。スイーツにイチゴは欠かせないだろう」 同じく紫乃の幼馴染。冷静で落ち着いた顔をしつつも、心には罪悪感を抱えている。自分の意見はしっかりと持っているが何かと振り回されやすい。最近はスイーツ作りにハマっている。4人の中で一番、字が汚いとの評判・重治。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop