受付嬢なのに、清掃員から一途に溺愛されています ~タワマン最上階で猫と過ごす、秘密の恋~
 ――朝から、大変だな。

 そう思って、
 私は小さく息を吸い込み、声をかける。

  「おはようございます」

 一瞬だけ動きが止まり、
 すぐに顔がこちらを向いた。

  「おはようございます」

 帽子を深くかぶり、
 黒縁の眼鏡の奥に視線を隠したまま、
 柔らかい声だった。

 それだけで、特別な言葉は何もない。
 私は軽く会釈をして、
 オフィスの奥へと足を向ける。

 ヒールの音が、
 広いロビーに小さく響いた。

 ――私も、頑張らないと。

 誰に聞かせるでもなく、
 心の中でそうつぶやく。

 背筋を伸ばし、
 今日一日の仕事を思い浮かべながら、
 静かな朝のロビーを後にした。
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