受付嬢なのに、清掃員から一途に溺愛されています ~タワマン最上階で猫と過ごす、秘密の恋~
 その日も、西条からメールが届いた。

 《配置換えだって?》

 画面を見つめて、
 少しだけ迷ってから、正直に返す。
 《はい。受付から、
  秘書課に移ることになりました》

 送信して、すぐに既読がついた。
 《そう。
 俺の近くのフロアになるね》

 それだけの、短い文。
 胸の奥で、何かが静かに繋がった。

 ……知っているよね。
 きっと。

 その瞬間、
 私ははっきりと理解していた。
 (今回の転籍は、西条さんの指示だ。)

 受付に立つことが、
 つらいとこぼしたこと。
 比べられるのが、
 少し苦しいと話したこと。
 大した愚痴でもないと思っていた、
 あの時間。
 あれを、覚えていたのだ。
 だから変えてくれたのか。

 それとも
 ――ただ、近くに置きたかっただけなのか。
 答えは、聞かない。
 聞かなくても、もう分かっていた。

 画面を閉じて、深く息を吸う。
 胸の奥が、じんわりと温かい。
 同時に、少しだけ、怖くもなった。

 ――こんなふうに、大切にされる資格が、
 私にあるのだろうか。
 それでも。

 指先に残る、その一言が、
 しばらく消えなかった。
 《俺の近くのフロアになるね》
 その言葉を、何度も心の中でなぞりながら、
 私は新しい日常へ向かう準備をしていた。
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