八年執着されましたが、幸せです ~傷心のホテリエですが、イケメン御曹司と契約恋人になりました~
 そう言った暁人さんは私の頬を撫でたあと、フワリと包み込むように抱き締めてきた。

 雲の上の存在――、しかもどんな女性も夢中になるような美形にそんな事をされ、私はどう反応したらいいか分からず、固まってしまう。

 その間も、暁人さんは言葉を続けた。

「愛されて『幸せ』と思えたなら、もっと自分を好きになれるんじゃないか? つまらない男を思い出して傷付くより、俺の愛を受け入れてくれ」

 確かに本当の意味で彼を愛し、愛される関係になったら、とても幸せになれるだろう。

 けれど私の胸の奥には、同棲して二日目の告白への戸惑いが残っている。

「……信じてもいいんですか? ……私、もう裏切られたくないんです」

「もしも俺が君を裏切ったら、殺してもいい」

 極端すぎる言葉を聞き、私は困り切って返事をする。

「……殺すなんてできません」

 すると暁人さんはクスッと笑い、私の額に口づけてきた。

「勿論、比喩だけど。……それぐらい、俺は芳乃を裏切らない自信がある」

 そう言って微笑んだ彼に一瞬既視感を覚えたけれど、すぐ優しいキスを与えられて、甘くかすんだ思考に紛れていった。

「ん……」

 柔らかな唇を何度も押しつけられた私は、空気を求めて喘ぐ。

 暁人さんは後頭部と背中を大きな手で支え、その掌のぬくもりに気持ちが落ち着いていった。

 彼は上下の唇を甘噛みすると、スルリと腰から臀部を撫で下ろす。

 そうされても不思議と、嫌悪感や抵抗はなく、私は自然と彼のキスを受け入れていた。

 私は初対面同然の彼と、これからセックスをする。

 職場では上司に当たる人だし、私は彼に借金しているし、二人の関係は〝普通〟ではない。

 でも彼は〝訳あり〟な私を優しく受け入れ、絶望から救ってくれた。

 ――なら、抱かれるぐらい、いいじゃない。

 ――私を大切にすると言ってくれているこの人なら、身を任せても裏切る事はないかもしれない。

 傷付いているから、差し伸べられた手に縋る。

 愚かしい選択かもしれないけれど、ズタボロに傷付いた私はただ、優しい誰かに助けてもらいたかった。

 やがてキスは舌を絡め合う深いものとなり、寝室にリップ音が何度も響く。

 Tシャツの裾から彼の手が侵入し、お腹や腰に触れてくる。

 素肌を撫でられてゾクゾクと身を震わせるけれど、やはり抵抗感はない。

 むしろもっと触ってほしいと、私の心に奥にある雌の本能が訴えていた。

 私は自然と腰を揺らしながら、おずおずと暁人さんの体に触れる。

 思っていた以上に滑らかでスベスベしている肌が気持ち良く、私はつい何度も彼の背中を撫でた。

 暁人さんは名残惜しそうにキスを終えると、私のTシャツを脱がしてパサリとベッドの上に落とす。

 そのあと、彼は私の背中に手を回したかと思うと、プツンとブラジャーのホックを外してきた。

「……怖い?」

 そう尋ねられて小さく首を横に振ると、彼は「良かった」と微笑んで私を抱き上げた。

「きゃ……っ」

 お姫様抱っこをされた私は、驚きと恥ずかしさで小さな悲鳴を上げる。

 私はすぐにキングサイズのベッドに横たえられ、スカートも脱がされて下着一枚の姿になった。

(今日……、何の下着をつけてたっけ)

 曲がりなりにも暁人さんと同棲するから、どうでもいい三軍の下着はつけていないはずだけれど、初めて彼と体を重ねるなら、一軍の綺麗な下着をつけておけば良かったと、今さら後悔する。

 不安になって起き上がろうとしたけれど、優しく肩を押されて押し倒された。

「そのまま」

 暁人さんは唇の前に人差し指を立てて「しぃ……」、と静かにするように伝えたあと、少しのあいだ私の体を見つめ、「綺麗だ」と呟くと両手で乳房を撫でてきた。

「ん……」

 温かい手で素肌に触れられ、得も言われぬ心地よさと安堵を得る。

 スルスルと掌で摩擦されていくうちに、乳首がプツンと凝り立った。

「はぁ……っ、あ、……あ、……」

 ウィルに愛撫された時は『大して気持ち良くない』と思っていた場所が、暁人さんに優しく触られると、別の器官に思えるほど快楽を伝えてくる。

 まるで自分の体なのに、知らない人の体に思える。

「嫌じゃない?」

 確認され、私は「はい」と頷く。

「……ウィリアムと比べてる?」

 けれどそう尋ねられ、ドキッと胸が高鳴った。
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