一年で終わるはずの契約結婚でした 〜離婚まであと一か月、夫が私を離しません〜
「……皮肉だな。」

社長は、遠くを見るように呟いた。

「彼女を想って、待っていた時間が……逆に、断られる理由になるなんて。」

そんなに——

そんなに、彼女のことが好きだったんだ。

胸が、ぎゅっと締めつけられる。

それでも私は、言葉を探した。

「きっと……お相手の方も、社長のことが好きなんだと思います。」

「え?」

社長が、驚いたようにこちらを見る。

「まさか」

私は首を振る。

「そうじゃなければ……『初婚だから』なんて理由で、断らないと思うんです。」

慎重で、臆病で、それでも相手を想っているからこその言葉。

私は、その女性の気持ちが、少しだけ分かってしまった。

「好きだから……」

声が、わずかに震える。

「社長には、もっといい方がいるって……そう、思われたんだと思います。」

必死だった。

社長を否定したくなくて、

彼女の選択を、冷たいものにしたくなくて。

それでも——

社長が傷ついた事実だけは、消えなかった。
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