一年で終わるはずの契約結婚でした 〜離婚まであと一か月、夫が私を離しません〜
そっと振り向いた社長は、ほんの少しだけ笑っていた。

「ありがとう。でも……振られてしまったんだよ。俺は。」

その声には、もう抵抗する力が残っていないように聞こえた。

——諦めてしまった人の声だ。

胸がざわつく。

こんなにも誠実で、こんなにも素敵な男性を振るだなんて。

相手は、どんな人なんだろう。

「……何て、言われたんですか。」

自分でも驚くほど、静かな声だった。

「うん……『あなたは初婚でしょう? バツイチの私とは合わないわ』って」

それ以上、社長は何も言わなかった。

私も、何も言えなかった。

——分かってしまったからだ。

その女性の気持ちが。

慎重にならざるを得ない年齢も、失敗したくない覚悟も。

そして同時に、選ばれなかった社長の痛みも。

理解できてしまうことが、こんなにも苦しいなんて、思わなかった。
< 10 / 15 >

この作品をシェア

pagetop