一年で終わるはずの契約結婚でした 〜離婚まであと一か月、夫が私を離しません〜
寂しそうな社長の背中を、抱きしめたいと思った。

私が、ここにいるって。

独りじゃないって。

衝動を必死に押し殺しながら、私は声をかける。

「……社長。」

「何だ?」

振り返らないその背中に、言葉を選びながら続けた。

「もし……初婚だからと言って断られたのなら、一度、結婚してから……もう一度、プロポーズしてみてはどうでしょう。」

一瞬の沈黙のあと、社長が声を立てて笑った。

「離婚するために結婚する、か。そんなこと、承諾してくれる女性がいると思うか?」

私は一歩踏み出し、社長のデスクに片手をつく。

もう、引き返せなかった。

「……私がいます。」

声は震えていたけれど、視線は逸らさなかった。

この一言で、何かが壊れると分かっていても。
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