一年で終わるはずの契約結婚でした 〜離婚まであと一か月、夫が私を離しません〜
「私が……社長と結婚します。」

自分の声が、やけに静かに聞こえた。

「そして、一年経ったら離婚します。そうすれば社長は、バツイチですから、お相手の方も……今度は、断らないと思います。」

社長は何も言わず、ゆっくりと椅子を回して、私の方を向いた。

「……本気か。」

「はい。本気です。」

逃げ場をなくすように、私は社長をじっと見つめた。

「一年だけって……ずいぶん、リアルだな。」

乾いた笑みが浮かぶ。

「ですよね。」

私は、思わず頷いた。

「結婚したけれど、相性が悪かった。価値観が合わなかった。……それなら、理由としても自然ですし。」

そこまで言ってから、私はニコッと笑った。

自分でも驚くほど、よくできた“提案”だった。

——恋をしている女の笑顔には、見えなかったかもしれない。
< 14 / 15 >

この作品をシェア

pagetop