御堂先生は溺愛中

「向こうの生活はどう?楽しんでいる?」



そう楽しそうに尋ねる遼太郎に、御堂は「まあね、そこそこ。」と返した。




嘘だ。



さっきまでどうして大野さんに距離を置かれているのかをずっと悩んでたくせに。



平日は残業続きで、休日は疲れて家に引き篭もる生活を送っているのに。



それでも兄に引けをとりたくない御堂は、平常心を装いながらそう返すのがいっぱいいっぱいだった。




「それならよかった。」



御堂の言うことをすっかり信じた遼太郎は、ホッとしたような表情でそう言った。



「謙次郎はいい人とかいないの?」



母にそう言われた御堂は少し考えた後「別に。」と返した。



「あらそう?それじゃあ、柳生さんちの娘さんはどう?あなたのこと素敵って言ってたわよ。」



「知らないよ、柳生さんなんて。」



「あのお父さんの知り合いの…この間のお食事会でいたじゃない?」



母にそう言われて、御堂は記憶を辿った。が、思い出せるはずもなく、「覚えてない。」と一蹴した。



「覚えてないならちょうどいいじゃない!今度顔合わせだけでもどうかしら?そこで覚えればいいでしょ?ね?」



それでもめげない母に、御堂はめんどくさそうにため息を吐いた。



「俺、こっちで結婚する気ないから。ほっといて。」




そう言って御堂はリビングから出て行った。


< 246 / 253 >

この作品をシェア

pagetop