御堂先生は溺愛中
「あら、おかえりなさい。謙次郎。」
実家のインターホンを押すと、御堂の母が彼を出迎えた。
「ただいま。」
珍しいな、なんて思いながら玄関で靴を脱いでいると、リビングからドタドタと騒がしい音が聞こえたと思えば、ガチャリと音を立ててリビングのドアが開いた。
「謙次郎、帰ってきてくれたんだ!嬉しいよ。」
満面の笑みを浮かべて御堂を出迎える兄の遼太郎を、御堂は「はいはい。」と適当にいなしてリビングへと入った。
俺は、兄さんに勝てる所なんて昔から一つもなかった。
顔も、頭も、運動神経も、俺はこの家ではいつも2番手だった。
これで性格が捻くれてるとか、すこぶる悪いとかだったら俺にもまだ救いがあったかもしれない。
だが、兄さんは性格までも良く、非の打ち所がない、を地で行く人間だ。
俺が何度疎ましく思って辛く当たっても、
『帰ってきてくれたんだ!嬉しいよ。』を本心で言っている兄さんに、俺はまた自己嫌悪に陥る。