婚約者にバカにされ続けた侯爵令嬢が「ざまぁ」するに至るまで

14.ハイヒールと絵画

 初夏のある日、ミラジェーンは自宅の玄関ホールへ向かった。

 以前オリン公爵夫人に仕立ててもらったものに似た、ウエストをコルセットで絞ったドレスを身につけていた。靴も、いつもよりヒールが高く、華奢な作りのものを選んでいた。


「ずいぶんと気合いの入った装いだな、ミラ」


 なぜかついてきたアドルフが苦笑した。


「別に褒めているわけではないからな」

「承知しておりますわ。嫁ぐ以上、先方の家風に従った方が無難だと判断しただけです」

「聞き分けが良すぎるのも考えものだな。おっと、婚約者殿がいらしたようだ」


 馬車が止まる音が聞こえ、やがてエリオットが玄関ホールへ通された。


「お迎えいただき、ありがとうございます、エリオット様」

「かまわないよ、僕は寛大だからね。ごきげんよう、アドルフ殿。わざわざ見送りとは、しっかりしていらっしゃる」

「妹かわいさでね。ミラ、暗くなる前に帰れよ」

「嫌ですわ、お兄様。過保護でいらっしゃいますこと。参りましょう、エリオット様」


 エリオットはアドルフに会釈すると、踵を返した。

 アドルフはミラジェーンに目配せをした。

 ミラジェーンは肩をすくめ、エリオットの後を追った。

 アドルフの


「いや、エスコートしろよ……」


 という呟きは、二人の耳には届かなかった。


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