婚約者にバカにされ続けた侯爵令嬢が「ざまぁ」するに至るまで
 その後はエースも交えて観光地の優先順位や予算について話し合い、やがて解散となった。

 ミラジェーンは帰る際にドレスを脱ごうとしたが、エースとルーシーに押し切られ、そのままブライズ侯爵と合流した。


「ふむ、ルーシー様はそういうお考えか……頭が痛いな……」


 馬車に乗り込むなり、ブライズ侯爵は目を細めて遠くを見やった。


「お父様……お騒がせしまして。でもこのドレス、とても着心地がよいのです。お母様にも勧めたいですわ」

「それならいいんだけどね。観光事業はどうだい? 男爵はずいぶん張り切っているみたいだけど」

「ええ、全体的な計画はよろしいかと。ただ、お父様の仰るとおり、詰めの甘い箇所がいくらか見受けられますわね」


 ミラジェーンは先ほどの話をブライズ侯爵に伝え、意見を求めた。



 やがて馬車はブライズ侯爵邸へと到着した。ブライズ侯爵は娘の手を取って馬車から降ろす。


「ミラ、待ちわびたよ」

「エリオット様」


 ブライズ侯爵邸からエリオットが姿を現した。

 そしてミラジェーンのドレスを見るなり、顔をしかめた。


「なんだい、その下品なドレスをまた着ているのか。ああ、城に行っていたのだったな。さては姉上だな? 姉上は自分までも王族になったつもりでつけあがっているんだ。まったく、君にそんなみっともないドレスは似合わないよ。今すぐ着替えてくるんだ」

「エリオット様、それは……」


 まくし立てるエリオットに、ミラジェーンは口を挟むことができなかった。

 ブライズ侯爵も驚いた様子であったが、娘よりも早く立ち直った。


「エリオットくん、落ち着きたまえよ。これは北部の観光事業のためのものだ。ドレスそのものを非難すべきではない」

「恐れながらブライズ卿、あなた様までこのような品のない、妊婦のようなドレスをお認めになるのですか」

「そういう問題ではないのだがな」

「ミラ」


 エリオットは眉間にしわを寄せたままミラジェーンを睨んだ。


「君はオリン家に嫁ぐ自覚が薄いのではないのか? いつまで独身気分で城で遊んでいるのだ。次期オリン公爵夫人として、浮かれるのも大概にしてほしい。今日はこれで失礼するよ。次のデートについての相談に来たのだが、それどころではなさそうだからね。ブライズ卿、失礼いたします」


 言いたいことだけ言うと、エリオットは踵を返し、オリン公爵家の馬車に乗って去っていった。

 残されたブライズ侯爵とミラジェーンは、顔を見合わせることしかできなかった。
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