婚約者にバカにされ続けた侯爵令嬢が「ざまぁ」するに至るまで
 帰りの馬車の中で、ミラジェーンはぼんやりと外を眺めていた。


「今年の春頃からでしょうか」

「ミラ様が引き継ぎでお忙しそうにされていた頃かしら」

「たしかブライズ侯爵夫人が社交パーティの主催をされていた頃も……」

「お相手ですが、以前お話ししたグロッタ男爵令嬢とアーシェス子爵令嬢と、それから……」

「最近ですと画廊でお見かけしましたわ」

「まあ、わたくしもです。ひと月ほど前のことかしら」


 ミラジェーンの頭の中で、令嬢たちの噂話が幾度も巡っていた。

 令嬢らから聞かされた家名は、どれもここ数年のうちにブライズ侯爵家が出資を断った家ばかりであった。


 ミラジェーンはゆっくりと息を吐いた。

 外ではまだ陽が高く、馬車内にも明るい陽射しが降り注いでいた。

 ミラジェーンの手元には暗い影が落ち、自分の手の形もわからなかったが、膝のあたりは明るく照らされていた。

 膝まで垂れ下がった銀のリボンがきらきらと光り輝き、ミラジェーンの瞳にはあまりに眩しく、目を離せなかった。


 ミラジェーンの正面には、険しい顔の侍女が座っていた。

 侍女はミラジェーンの様子を気にしながら、ブライズ侯爵邸に戻った際の引き継ぎについて考えていた。

 まずすべきは、令嬢らから聞いた話をアドルフ付きの侍女に伝えることだろう。
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