婚約者にバカにされ続けた侯爵令嬢が「ざまぁ」するに至るまで
「私、いけすかない連中からあることないこと吹き込まれた、何の役にも立たない雌鶏でございますのよ。そんな者とオリン公爵家のご令息がいつまでも関わり合っていてはなりませんわ。そこにサインをいただくだけで、今後一切の関わりのない赤の他人になれましてよ?」
朗らかな笑みを向けられ、エリオットは顔を引きつらせて口を開き、すぐに閉じた。
「そちらに記載しておりますが、サインをいただければ、お茶会でも社交界でも夜会におきましても、わたくしは一切オリン公爵家の方々に関わらぬことを王家に誓い、お約束いたします。賢しい小娘の面倒を見ることも、いけ好かない侯爵家の跡取りに話しかけられることもなくなります」
ミラジェーンは滔々と語って聞かせたが、エリオットは青白い顔で彼女を見つめるばかりだった。
……また、お兄様と殿下の予想が当たったのかしら。
ミラジェーンは笑顔を保ちながらも困惑していた。
エリオットはすぐにサインするものと思っていたのに、どうしたことか書類を前に震え、ペンすら持とうとしない。
大切にしたくもない相手と、いつまでも婚約関係にある必要などないはずであった。
家のことを考えれば、エリオットはミラジェーンを大切に扱わねばならなかった。
オリン公爵家を立て直すためにミラジェーンを迎え入れるというのに、それでもなお粗末に扱うのであれば、それほどまでに自分は嫌われているのだろうと、ミラジェーンは思っていた。
やはり、エースと秘書官が言っていた「飼い犬に手を噛まれた」という気持ちなのだろうかとミラジェーンが考えていると、エリオットが震えながらようやく口を開いた。
「婚約破棄の理由を君はなんて説明したんだ?」
「していません」
「えっ」
「私から両親にも、オリン公爵夫妻にも、国王陛下にも婚約破棄の理由は述べておりません。……誰にも問われませんでしたから」
ミラジェーンがそう答えると、エリオットの手が震えた。
「り、理由もなしに国王陛下がお認めになった婚約を破棄できるわけがないだろう!?」
「ええ。ですので皆様、私が説明せずとも婚約破棄をお認めくださったのです。やむを得ぬ状況であると」
「やむを得ない……?」
「はい」
ミラジェーンは小さく頷いた。
「皆様、ここまで不貞が大々的に知れ渡っていれば婚約破棄もやむなしと、快くサインをくださいました」
「こっ、国王陛下もか……?」
「ええ」
「な……っ」
エリオットは顔面を蒼白にし、今度こそ項垂れた。
朗らかな笑みを向けられ、エリオットは顔を引きつらせて口を開き、すぐに閉じた。
「そちらに記載しておりますが、サインをいただければ、お茶会でも社交界でも夜会におきましても、わたくしは一切オリン公爵家の方々に関わらぬことを王家に誓い、お約束いたします。賢しい小娘の面倒を見ることも、いけ好かない侯爵家の跡取りに話しかけられることもなくなります」
ミラジェーンは滔々と語って聞かせたが、エリオットは青白い顔で彼女を見つめるばかりだった。
……また、お兄様と殿下の予想が当たったのかしら。
ミラジェーンは笑顔を保ちながらも困惑していた。
エリオットはすぐにサインするものと思っていたのに、どうしたことか書類を前に震え、ペンすら持とうとしない。
大切にしたくもない相手と、いつまでも婚約関係にある必要などないはずであった。
家のことを考えれば、エリオットはミラジェーンを大切に扱わねばならなかった。
オリン公爵家を立て直すためにミラジェーンを迎え入れるというのに、それでもなお粗末に扱うのであれば、それほどまでに自分は嫌われているのだろうと、ミラジェーンは思っていた。
やはり、エースと秘書官が言っていた「飼い犬に手を噛まれた」という気持ちなのだろうかとミラジェーンが考えていると、エリオットが震えながらようやく口を開いた。
「婚約破棄の理由を君はなんて説明したんだ?」
「していません」
「えっ」
「私から両親にも、オリン公爵夫妻にも、国王陛下にも婚約破棄の理由は述べておりません。……誰にも問われませんでしたから」
ミラジェーンがそう答えると、エリオットの手が震えた。
「り、理由もなしに国王陛下がお認めになった婚約を破棄できるわけがないだろう!?」
「ええ。ですので皆様、私が説明せずとも婚約破棄をお認めくださったのです。やむを得ぬ状況であると」
「やむを得ない……?」
「はい」
ミラジェーンは小さく頷いた。
「皆様、ここまで不貞が大々的に知れ渡っていれば婚約破棄もやむなしと、快くサインをくださいました」
「こっ、国王陛下もか……?」
「ええ」
「な……っ」
エリオットは顔面を蒼白にし、今度こそ項垂れた。