きっと、夏のこと









牧田さんは、きっと私の変化に気づかなかった。










私のちょっと大人になった髪型も、新しい鞄も、新しい服も、新しいネイルも。


実は勉強ができるようになっていた私のことも。


ギターが驚くほどうまくなった私も。


『幾億光年』が理解できるようになった私も。




あの頃の、初めて出会った高校二年生の私のまま、何も知らない私のまま。


牧田さんを知らない、あの頃の私のままで。


牧田さんにとっての私はずっと変わらなかった。







一度も、ほんの一回も呼ばれることがなかった私の名前。


ラインの画面を何スクロールしても見つからない、


ずっとずっと下に行ってしまった私の名前。


牧田さんはきっともう覚えていない。







急におかしくなって、満員電車に揺られながら、

ふっと笑った。


「ばいばい、牧田さん」


私の声は満員電車の熱気の中で静かに蒸発していった。






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