きっと、夏のこと
第十六話 『変わっていく私を知らないままの人』
大学生活もあっという間に終わりそうな、
大学4年の8月。
就活の最終面接で、私は会社に向かっていた。
その途中、偶然、出勤途中の牧田さんを見つけた。
こんな遠くから見ただけでわかるなんて、そんなの、きっと私ぐらいだ。
そのシルエットが少しずつ大きくなった時、私は小さく会釈した。
最初は誰かわからないみたいな顔をして、その後に、あって顔をして手を振ってくれる。
牧田さんは立ち止まることなく、
すれ違いざまに声をかけてくれた。
「なんか質問あったら、また連絡して」
疲れたような、でも変わらない笑顔と声。
私の胸の奥にしまわれた、ずっと好きだった優しいままの牧田さんだった。
声をかけようとした時、牧田さんは驚くほどすでに遠くにいた。
大好きで、ずっと追いかけていた後ろ姿も、もう探さないでというように小さかった。