サブキャラ令嬢ですが、神竜王陛下を溺愛させて幸せエンドにします! ~ヤンデレ親友と同盟して、悲恋ルートを全部へし折ります~
謁見の間に、あまり長居はできない。私とお父様は、カイン将軍に先導されて謁見の間を出た。お父様とは、ここで一旦お別れだ。
「お父様……」
少し心細そうな表情で、お父様を見上げる。内心のうきうきを気取られてはいけない。
「不安がるものではない、アレクシア。カイン・シュラウス将軍、この先のこと、お願いする」
「は」
短く答えて顔を伏せたカインの、焦茶の髪が揺れた。他の貴族や侍従、女官達がいるこの場所で、あまり詳しい話はできない。
「必ずご無事に、姫をお送り申し上げます」
「頼む」
具体的なことは口にせず、それでもカインの真摯な言葉にお父様は少し安堵して、私の頭を撫でた。
「ルイーサには、おまえは買い物をしているとでも言っておこう。帰りに、何でも好きな物を買っておいで」
「はい。……お父様、もし、王宮からエージュの迎えが来たら……」
「わかっている。おまえのいない間に、そのようなことはさせないよ」
私の髪を結っている髪飾りをきちんと整えて、お父様はゆったり笑った。
「姫。お急ぎを」
「はい。お父様、行ってまいります」
「気をつけるのだよ。将軍が同行下さるとはいえ、おまえは少しお転婆だからね」
そう笑ったお父様は、茶化すことで自分の不安を拭おうとしている、そんな様子も感じ取れた。
大丈夫よ、お父様。オリヴィエを見つけて「この方です!」と演技するだけだから。今日、すぐに神竜召喚ってことにはならないから。
私は、お父様と別れた後、カインに神殿まで案内してもらった。余計なことは訊かない。ボロを出したくないから。
「……姫」
「はい?」
沈黙でやり過ごそうと思っていたのに、カインが私に話しかけてきた。アドリブで対応できる範囲の質問にしてほしい。
「未来視とは、それほど確かにわかるものなのですか?」
「……おっしゃる意味が……」
「令嬢方のご依頼に、個人の未来はわからぬと、姫は未来視を拒まれたと聞き及んでいます。ですが、今日告示された王女殿下の出生──それは、「個人」のことではないのですか?」
痛いところを突いてきた。カインは剣の腕一本で成り上がった将軍だけど、脳筋ではない。脳筋じゃ、将軍職は務まらない。
「わかりません。ただ、エージュが王女だということは、エージュ個人の問題ではないと思いますから」
「確かに、王女殿下の存在は国の問題でもありましょう。ですが、それならば、姫に未来視をお願いした令嬢方の中に、王太子殿下の妃となられる方はいないということですな」
「え……?」
「王女殿下のことより、王太子殿下の妃──つまり、未来の王妃陛下の方が、国の大事かと思いますが」
痛いところを突くどころか、抉ってきた。エージュに相談できないこのタイミングで!
私は、進む歩を止めた。その気配に気づいて振り返ったカインの、黒い瞳をじっと見る。
「……正直に申し上げます。私は、未来視などしたくないからです」
「姫?」
「ですから、姫君方の未来視の依頼、あれは「視えない」とお断りしましたが、本当は「視ようとしていない」のです。私に依頼なさった方の中に、未来の王妃陛下はいらっしゃるかもしれません」
「……何故、とお聞きしてよろしいか」
面倒だからです。リヒト殿下はミレイに押しつける予定だし。
──とは言えないので、私は曖昧に笑った。
「王太子殿下の未来を、私が決めたくはないのです。私には、今、一番可能性が高い未来が視えるだけなのですから。私がどなたかを「王太子殿下と結ばれる」と申し上げたら、ご婚約まで進んでしまいかねない。そうなった後で、殿下が真に愛する御方と巡り会うかもしれませんもの」
実際そうなってもらう予定だし。今後、ミレイが誰を選ぶかはわからない。ローランは渡さないし、カインはエージュの保険なんだから、「ミレイ」の選択肢からリヒトやシルヴィス、オリヴィエを外して展開を狂わせることは避けたいのよ。
「……姫。申し訳ない」
「え?」
「俺は、あなたを疑っていました。ご自分が王太子殿下の妃となる為に、他の令嬢を蹴落とし、王女殿下の出生を暴いて、妃候補から外したのではないかと……」
「あり得ません!」
言われてみれば、そう取れなくもないかもしれない。でも私はローラン一筋です! リヒト殿下は鑑賞するにはいいけど、あのシスコンっぷりは無理だ。
「私に王太子妃など務まりません、王妃なんてもっと無理です!」
絶対に嫌だという私の気迫が通じたのか、カインは苦笑した。そして、申し訳ないともう一度謝る。
「王女殿下が、あなたとご一緒でなくては嫌だ、一緒に過ごせぬなら王女と認められずともよいとおっしゃっている、と伺って……その、あの御方まで籠絡なさったのかと」
少し頬を染める三十路のおっさん(イケメンだけど)。……エージュ、あなたのターゲットは既に陥落済だわ、おめでとう。
「エージュは大切な親友です。親友と一緒にいたいのは、私達……この年頃の女の子なら、普通のことじゃないかしら。他愛ないことをお話ししたり、お茶を楽しんだり。家族より友達を優先してしまって、後で反省したりもしますけれど」
乙女の繊細な心情はわからないでしょ?と匂わせると、カインは大きな体を二つ折りにしそうな勢いで頭を下げた。
「まこと、申し訳ない」
「構いません、誤解だったのですもの。私も、もっと言動に気をつけますね。王太子殿下のことは尊敬していますけれど、恋い慕ってはいません。私、初恋もまだですから」
神竜召喚の後に、恋に堕ちる予定です。
私の言葉に、カインは「そうおっしゃっていただけると」と安心したように息をついた。
──とりあえず、こういう誤解が他に広まっていないか、屋敷に戻ったらエージュに相談しなきゃね。
「お父様……」
少し心細そうな表情で、お父様を見上げる。内心のうきうきを気取られてはいけない。
「不安がるものではない、アレクシア。カイン・シュラウス将軍、この先のこと、お願いする」
「は」
短く答えて顔を伏せたカインの、焦茶の髪が揺れた。他の貴族や侍従、女官達がいるこの場所で、あまり詳しい話はできない。
「必ずご無事に、姫をお送り申し上げます」
「頼む」
具体的なことは口にせず、それでもカインの真摯な言葉にお父様は少し安堵して、私の頭を撫でた。
「ルイーサには、おまえは買い物をしているとでも言っておこう。帰りに、何でも好きな物を買っておいで」
「はい。……お父様、もし、王宮からエージュの迎えが来たら……」
「わかっている。おまえのいない間に、そのようなことはさせないよ」
私の髪を結っている髪飾りをきちんと整えて、お父様はゆったり笑った。
「姫。お急ぎを」
「はい。お父様、行ってまいります」
「気をつけるのだよ。将軍が同行下さるとはいえ、おまえは少しお転婆だからね」
そう笑ったお父様は、茶化すことで自分の不安を拭おうとしている、そんな様子も感じ取れた。
大丈夫よ、お父様。オリヴィエを見つけて「この方です!」と演技するだけだから。今日、すぐに神竜召喚ってことにはならないから。
私は、お父様と別れた後、カインに神殿まで案内してもらった。余計なことは訊かない。ボロを出したくないから。
「……姫」
「はい?」
沈黙でやり過ごそうと思っていたのに、カインが私に話しかけてきた。アドリブで対応できる範囲の質問にしてほしい。
「未来視とは、それほど確かにわかるものなのですか?」
「……おっしゃる意味が……」
「令嬢方のご依頼に、個人の未来はわからぬと、姫は未来視を拒まれたと聞き及んでいます。ですが、今日告示された王女殿下の出生──それは、「個人」のことではないのですか?」
痛いところを突いてきた。カインは剣の腕一本で成り上がった将軍だけど、脳筋ではない。脳筋じゃ、将軍職は務まらない。
「わかりません。ただ、エージュが王女だということは、エージュ個人の問題ではないと思いますから」
「確かに、王女殿下の存在は国の問題でもありましょう。ですが、それならば、姫に未来視をお願いした令嬢方の中に、王太子殿下の妃となられる方はいないということですな」
「え……?」
「王女殿下のことより、王太子殿下の妃──つまり、未来の王妃陛下の方が、国の大事かと思いますが」
痛いところを突くどころか、抉ってきた。エージュに相談できないこのタイミングで!
私は、進む歩を止めた。その気配に気づいて振り返ったカインの、黒い瞳をじっと見る。
「……正直に申し上げます。私は、未来視などしたくないからです」
「姫?」
「ですから、姫君方の未来視の依頼、あれは「視えない」とお断りしましたが、本当は「視ようとしていない」のです。私に依頼なさった方の中に、未来の王妃陛下はいらっしゃるかもしれません」
「……何故、とお聞きしてよろしいか」
面倒だからです。リヒト殿下はミレイに押しつける予定だし。
──とは言えないので、私は曖昧に笑った。
「王太子殿下の未来を、私が決めたくはないのです。私には、今、一番可能性が高い未来が視えるだけなのですから。私がどなたかを「王太子殿下と結ばれる」と申し上げたら、ご婚約まで進んでしまいかねない。そうなった後で、殿下が真に愛する御方と巡り会うかもしれませんもの」
実際そうなってもらう予定だし。今後、ミレイが誰を選ぶかはわからない。ローランは渡さないし、カインはエージュの保険なんだから、「ミレイ」の選択肢からリヒトやシルヴィス、オリヴィエを外して展開を狂わせることは避けたいのよ。
「……姫。申し訳ない」
「え?」
「俺は、あなたを疑っていました。ご自分が王太子殿下の妃となる為に、他の令嬢を蹴落とし、王女殿下の出生を暴いて、妃候補から外したのではないかと……」
「あり得ません!」
言われてみれば、そう取れなくもないかもしれない。でも私はローラン一筋です! リヒト殿下は鑑賞するにはいいけど、あのシスコンっぷりは無理だ。
「私に王太子妃など務まりません、王妃なんてもっと無理です!」
絶対に嫌だという私の気迫が通じたのか、カインは苦笑した。そして、申し訳ないともう一度謝る。
「王女殿下が、あなたとご一緒でなくては嫌だ、一緒に過ごせぬなら王女と認められずともよいとおっしゃっている、と伺って……その、あの御方まで籠絡なさったのかと」
少し頬を染める三十路のおっさん(イケメンだけど)。……エージュ、あなたのターゲットは既に陥落済だわ、おめでとう。
「エージュは大切な親友です。親友と一緒にいたいのは、私達……この年頃の女の子なら、普通のことじゃないかしら。他愛ないことをお話ししたり、お茶を楽しんだり。家族より友達を優先してしまって、後で反省したりもしますけれど」
乙女の繊細な心情はわからないでしょ?と匂わせると、カインは大きな体を二つ折りにしそうな勢いで頭を下げた。
「まこと、申し訳ない」
「構いません、誤解だったのですもの。私も、もっと言動に気をつけますね。王太子殿下のことは尊敬していますけれど、恋い慕ってはいません。私、初恋もまだですから」
神竜召喚の後に、恋に堕ちる予定です。
私の言葉に、カインは「そうおっしゃっていただけると」と安心したように息をついた。
──とりあえず、こういう誤解が他に広まっていないか、屋敷に戻ったらエージュに相談しなきゃね。