サブキャラ令嬢ですが、神竜王陛下を溺愛させて幸せエンドにします! ~ヤンデレ親友と同盟して、悲恋ルートを全部へし折ります~
「オリヴィエ・ステファニアス、お召しにより──」

 このタイミングで参上するオリヴィエは、運に見放されているとしか言えない。
 入室したオリヴィエは、室内にいる、見知らぬ高貴な少女──エージュに、呆然として突っ立った。
 その様子で私は確信した。こいつ、今、エージュに堕ちた。
 エージュもピンと来たらしく、私達は咄嗟に作戦変更した。

「……この方? わたくしとアリーが謀って、皆様を誑かしたとおっしゃったのは」
「そうだ」

 空気を読まずに頷くリヒト殿下。ありがとうございます、私が頷いてたら、オリヴィエの逆恨みを買うところだったわ。

「……アリーは……アリーは、魔力を削って未来視をしているのに。わたくしの為に、完全回復魔法まで使ってくれたのに。それすら、演技だとおっしゃるの」

 実際、演技ではある。魔力を削ったのは、回復魔法を発動させた時だけだし。

「僕、は……」
「……そのせいで、アリーが召喚魔法を……! オリヴィエ様はアリーに何の恨みがおありなの」

 オリヴィエは、昨日の高飛車な態度はどこへやら、肩を落として俯いた。恋ってすごい。

「アリーに何かあったら、わたくし、わたくし……!」

 そんなことは考えたくもないと言うように、エージュは再び泣き出した。上手い。

「泣かないで、エージュ。大丈夫よ、魔力は輝石に貯めてあるわ。召喚魔法は難しいものだけれど、国の為だもの。私、大丈夫だから」
「アリー……」

 うるうるした瞳で私を見つめるエージュ。私が男だったら、完全に恋人の愁嘆場だ。

「オリヴィエ様やシルヴィス様が、私の未来視を信じられないのも、仕方ないわ。私に視えるのは、近しい人達の未来と、国に関わることだけなのだもの。信じていただけなくてもいいの。エージュ、あなたさえ信じてくれたら、私はそれでいい。あなたを守れたから、もう未来視なんてできなくてもいいの」
「アリー……!」

 私の薄い胸に顔を埋めて泣きながら(悲しいことに、埋めるほどはボリュームがない)、エージュはリヒト殿下に訴えた。

「召喚魔法を、わたくしが使えればいいのに! そうしたら、あなたを守れるのに……わたくしは、何と無力なの!」

 エージュの嘆きに、オリヴィエが反応した。

「……僕がやります」
「オリヴィエ?」

 空気を読んで下さっていた大神官様が、どうしたのだと言うようにオリヴィエを呼ぶ。やだなー、大神官様も演技派だわー。オリヴィエがエージュに一目惚れしたこと、リヒト殿下以外は気づいてます。

「僕の迂闊な発言で、アレクシア姫を苦境に立たせ、エルウィージュ姫をこのように嘆かせている。謝罪というわけではありませんが、アレクシア姫は、僕が神竜召喚したことを未来視したとおっしゃった。ならば、僕が召喚します。──それでお許し下さいとは言いませんが、どうか、お心を静めて下さい」

 俺様系のオリヴィエが、この殊勝な物言い。笑える。しかし笑うわけにはいかないので、私はドレスの中で、自分の右足の甲を、左足のハイヒールの踵で踏みつけた。

「……本当に……?」

 震える声で問いかけるエージュ。笑いを堪えているので、顔は私の胸に埋めたままだ。この手はそう何度も使えないから、顔を上げなさいってば。

「はい。アレクシア姫がそれをお許し下さるなら……ですが」
「アレクシア。オリヴィエにやらせてはどうだろう。君自身が学ぶことに問題はないが……」
「……わかりました。では、オリヴィエ様にお願い致します。ですけれど、私も召喚魔法を学びます」
「アリー」

 ぱっと顔を上げ、エージュが私を咎める。これは、本気か演技か、ちょっとわからない。だから私は、正直に言った。

「……輝石を託せる方かどうか、見極めたいの」

 私の言葉に、エージュは仕方なさそうに頷いてみせた。そして、オリヴィエにさらりと告げた。

「アリーの信頼を……裏切らないで下さいませ」
「はい、エルウィージュ姫」
「兄上様、シルヴィス様も……どうか、アリーが無茶をしないように気にかけて下さいませ。アリーに何かあったら、わたくし、生きていられない」
「エルウィージュ……!」

 友情に感動しているリヒト殿下の後ろで、シルヴィスが「大げさな……」と言いたげな顔で、それでも頷いてはくれた。私達は、あくまで友情に篤いだけです。異常さでは、あなたのリヒト殿下への執着には負けるわよ。

「……信じておりますわ」

 にっこり微笑ったエージュに、リヒト殿下とオリヴィエは#魅惑__チャーム__#の魔法でもかけられたかのように陶然としている。シルヴィスだけは、面白くなさそうだ。
 私は、シルヴィスに微笑みかけた。エージュほどではないけど、アレクシアも美少女なのである。

「シルヴィス様。エージュは心配性なのです。心配をかける私がいけないのですけれど」
「いや……エルウィージュ様の気持ちは、わからなくもない。見ていて危なっかしい者が身近にいると、心配性になるものだからな」
「まあ。王太子殿下のことを、そんな風におっしゃるなんて」
「私は、リヒトのことだとは言っていない」

 シルヴィスはそう言うと、私に少しだけ心を許したように苦笑した。



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