サブキャラ令嬢ですが、神竜王陛下を溺愛させて幸せエンドにします! ~ヤンデレ親友と同盟して、悲恋ルートを全部へし折ります~
出番ですよ。
エージュの自殺未遂は、あっという間に広まった。灼光毒を煽ったこと、致死量に近かったその毒を、エージュの死を未来視した私が輝石の魔力を惜しみなく使って解毒したことも。後者は、お父様が親しい貴族達にさりげなく「娘がどうしてもと泣くので、非礼を承知で伺ったが……却ってよかった」と言って回っているからだ。前者は、エージュ自身が「父ではない方の元にはいられません」とバシュラール侯爵家を出たから周知された。避難先はもちろん我がラウエンシュタイン家。
そして、自殺未遂からわずか三日。今日、国王陛下がバシュラール侯爵を召したと、お父様が教えてくれた。
その報せを持って、私はエージュが療養──と称して我が家の蔵書を読み耽っている客間を訪れた。
「エージュ、ご機嫌いかが?」
「麗しくてよ?」
ベッドで楽な姿勢を取りながら読んでいた本から顔を上げて、エージュは花のように微笑んだ。
「カンタレラ……天使の毒薬、ねえ。嘘ね。まずかったもの」
「でも、エージュが無事でよかった。私、途中から演技どころじゃなかった」
「その方が真実味があっていいわ。アリー、そんなに心配したの?」
「だって、エセルバートさんが灼光毒だって言うから……エージュが予定を変えたのかと思って」
「わたくしは、予定は変えないわ。変えるなら、変えたことをあなたに知らせる。どんな手段でもね」
力強く言った後、エージュは不意に笑い出した。思い出し笑いというやつだ。
「あの時の、お父様の顔! わたくしが自殺未遂するなんて思ってもいなかったのでしょうね。するつもりもないから、正しい洞察なのだけれど」
バシュラール侯爵は、娘の自殺未遂に放心していた。それをいいことに、エージュは「わたくしは、バシュラールの血を引いていませんから、屋敷を出ます。御機嫌よう、お兄様」と言い捨てて、私に「お世話になってもいいかしら」と問いかけたのだ。あの状態で否と言ったら私は外道だし、お父様だって断るはずもない。
よって、ごく自然に、エルウィージュ・フルール・ルア・バシュラール侯爵令嬢は、噂話に目がない社交界に、自分の自殺未遂と逆勘当というセンセーショナルな話題を、セットで提供したのである。
「体は大丈夫? 後遺症とかはない?」
「完全治癒の呪文に勝てる毒はないわ。安心して、アリー」
私の巻き毛をくるくると指に絡めて(お気に入りらしい)、エージュは楽しそうに笑う。その様子に無理も偽りも感じられないので、私はとりあえず安心することにした。
「でも、もしどこか具合が悪くなったら、すぐに言ってね?」
「ええ。……実はね、とても……嫌な予感がしているの」
エージュは、どこかもどかしそうに呟いた。嫌な予感って、何だろう。
「予感?」
「予感というか……ほぼ確信に近いというのかしらね……」
溜息まじりにそう言うと、私の肩に頭をもたせかけた。エージュの頭が触れる軽い感触がして、私の肩からは、淡い金の巻き毛と、まっすぐな銀の髪が絡むように流れている。
「エージュ?」
「……お父様が陛下に召されたのでしょう? それなら……」
その先は、聞こえなかった。言い終わる前に、無遠慮に扉が開かれたからだ。
「エルウィージュ! 私の妹!」
──あ、そういうことね……エージュの「嫌な確信」。
扉を開けて、歓喜に紅潮した頬で私達、というかエージュを見つめている、プラチナブロンドに淡い翡翠色の瞳の美青年は、リヒト・カール・ルア・カイザーリング、十七歳。
この国の王太子殿下で、エージュの異母兄にあたる彼は、いわゆる「メインヒーロー」なのであった。
そして、自殺未遂からわずか三日。今日、国王陛下がバシュラール侯爵を召したと、お父様が教えてくれた。
その報せを持って、私はエージュが療養──と称して我が家の蔵書を読み耽っている客間を訪れた。
「エージュ、ご機嫌いかが?」
「麗しくてよ?」
ベッドで楽な姿勢を取りながら読んでいた本から顔を上げて、エージュは花のように微笑んだ。
「カンタレラ……天使の毒薬、ねえ。嘘ね。まずかったもの」
「でも、エージュが無事でよかった。私、途中から演技どころじゃなかった」
「その方が真実味があっていいわ。アリー、そんなに心配したの?」
「だって、エセルバートさんが灼光毒だって言うから……エージュが予定を変えたのかと思って」
「わたくしは、予定は変えないわ。変えるなら、変えたことをあなたに知らせる。どんな手段でもね」
力強く言った後、エージュは不意に笑い出した。思い出し笑いというやつだ。
「あの時の、お父様の顔! わたくしが自殺未遂するなんて思ってもいなかったのでしょうね。するつもりもないから、正しい洞察なのだけれど」
バシュラール侯爵は、娘の自殺未遂に放心していた。それをいいことに、エージュは「わたくしは、バシュラールの血を引いていませんから、屋敷を出ます。御機嫌よう、お兄様」と言い捨てて、私に「お世話になってもいいかしら」と問いかけたのだ。あの状態で否と言ったら私は外道だし、お父様だって断るはずもない。
よって、ごく自然に、エルウィージュ・フルール・ルア・バシュラール侯爵令嬢は、噂話に目がない社交界に、自分の自殺未遂と逆勘当というセンセーショナルな話題を、セットで提供したのである。
「体は大丈夫? 後遺症とかはない?」
「完全治癒の呪文に勝てる毒はないわ。安心して、アリー」
私の巻き毛をくるくると指に絡めて(お気に入りらしい)、エージュは楽しそうに笑う。その様子に無理も偽りも感じられないので、私はとりあえず安心することにした。
「でも、もしどこか具合が悪くなったら、すぐに言ってね?」
「ええ。……実はね、とても……嫌な予感がしているの」
エージュは、どこかもどかしそうに呟いた。嫌な予感って、何だろう。
「予感?」
「予感というか……ほぼ確信に近いというのかしらね……」
溜息まじりにそう言うと、私の肩に頭をもたせかけた。エージュの頭が触れる軽い感触がして、私の肩からは、淡い金の巻き毛と、まっすぐな銀の髪が絡むように流れている。
「エージュ?」
「……お父様が陛下に召されたのでしょう? それなら……」
その先は、聞こえなかった。言い終わる前に、無遠慮に扉が開かれたからだ。
「エルウィージュ! 私の妹!」
──あ、そういうことね……エージュの「嫌な確信」。
扉を開けて、歓喜に紅潮した頬で私達、というかエージュを見つめている、プラチナブロンドに淡い翡翠色の瞳の美青年は、リヒト・カール・ルア・カイザーリング、十七歳。
この国の王太子殿下で、エージュの異母兄にあたる彼は、いわゆる「メインヒーロー」なのであった。