バッドエンド後の死に戻り転生悪役令嬢は、ヤンデレ皇帝の狂愛を受ける 私が救済の歌姫なんて、聞いてませんわ!
「婚約者でもなんでもない俺が、こうして君と目を合わせる機会は限られている。俺はこの瞬間に喜びをいだき、幸せを噛みしめるべきだと判断した」
「あなたの言っていることは、さっぱり理解できませんわ」
「わかってほしいとは思っていない。今はまだ、俺が勝手に君を好いているだけだ」
「それが迷惑だと言っていますの。物わかりの悪い猿は、嫌いですわ」
「その猿のおかげで、貞操の危機が守られたのだが……。綺麗さっぱり忘れられているようで、悲しいな」

 ダグラスが悲しそうに目を反らした直後、今まで黙って話を聞いていたラルラが息を呑む。
 彼女は今にも移動中の馬車から立ち上がりそうな勢いで、大声を上げた。

「ゼヴァイツ公爵令息!? 一体、どういうことですか!? お嬢様の貞操を奪おうと目論む不届き者が、王城に現れるなど……! 由々しき事態です!」
「ラルラ。説明はあとですると伝えたはずでしてよ」
「で、ですが……」
「もう、黙って下さる? あなたが話すと、どんどんとややこしくなってしまいますの」
「わかった」

 彼は口を閉ざした代わりに、幸せで堪らないと言わんばかりのオーラを全身に纏わせてこちらをじっと見つめてくる。
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