彼女の季節を戻したい

ネタバレをくらう彼女


 昨日のあの後、家に帰るなり、

「冬青、あんた明日空いてる?」

 そんなことを母さんから聞かれた。

「空いているけど?」
「それだったら急で悪いんだけど、早乙女さんのところに行ってくれない?」
「何の手伝い?」
「じゃがいも。来てくれる予定だったおばちゃんたちが三人くらいインフルにかかっちゃってね。本当は頼らないつもりだったけど頼ることにしたんですって」
「分かった」
「じゃあお母さんの方から了解って伝えておくわね」
「よろしく」

 そんなわけで、今日の成人の日、僕は朝から早乙女さんの家に向かうことになった。

「冬青くん、よく来たねぇ。本当に助かるよおばあちゃん。頑張ろうね、美味しい昼食も用意しているし、今引き取っている親戚の葵にも手伝ってもらうことになったんだよ」

 ……うん、予想していた。なんとなく。

「確か、葵とは同じクラスなんだよね?」

 おばあさんは、いつも通りの年寄りにありがちな間延びした口調でそんなことを聞いてきた。

「そうです」
「それはいい。仲良くしてやってね」
「はい」

 そこからは、一旦早乙女さんのお宅に入って物を運ぶ準備をする。
 そこでようやく、葵を見かけた。

「おはよう、葵」
「おはよう、冬青。……本当に来ているんだ」
「そうだけど……本当にってどういうこと?」

 しかも、「来たんだ」じゃなくて「来ているんだ」?
 まるで、僕が過去にも来ていることを知っているかのような。

「えーっとね……」

 そして、葵が話し始めたところでおばあさんがやってきた。

「葵ちゃんに冬青くんも。もうすぐ畑に向かうから玄関の方においで」
「分かりました」
「分かった」

 そして、葵との話は一旦途切れた。

 僕たちが畑に行く途中、おばちゃんは僕たちに話しかけてきた。

「葵ちゃん、どうだい冬青くんは? 言っていた通りの優しい子だろう?」
「うん、そうだね。……教えるつもりはなかったのに」

 隣を歩いていたからか、葵が小さく呟いた言葉まで聞こえてしまった。
 教えるつもりはなかった?
 それに……言っていた通り?
 つまり、おばちゃんが葵に僕が来ていることを教えたということか!

「おばちゃん一体何を教えたの?」
「ん? そうだねぇ。冬青くんという優しい男の子がいて、わたしらを手伝ってくれるからとても助かっているよ、くらいだよ」

 ……聞かなければよかった。

「そう……」

 僕は、そう言うことくらいしか出来なかった。

 葵とおばちゃんが話しているのを聞きながら。

 そういえば、と僕は思い出す。
 葵に名前を教えたとき、変な反応をされたよなぁ。
 もしかしたら、おばちゃんのこのセリフの中身のような内容を聞いていたからかもしれない。
 そして、僕の見た目のあまりの想定外さ……貧弱さ……に驚いたんだろうな。
 
 腑に落ちた。


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