彼女の季節を戻したい

作業に疲れる彼女


「それじゃあ始めようか」

 この畑はおばちゃんの畑だから、おばちゃんがみんなを仕切る。ちなみに、おじさんはいつも通り料理担当だ。
 僕と葵を含めて、七人くらいが参加していた。

「種芋を切り口を下にして10cmほどの穴に入れて……」

 おばちゃんの説明を聞いて作業を始める。

「冬青はいつから手伝っているの?」
「結構小さいときからだよ」
「どうして?」
「始めは偶然でね。母さんが人手が今日みたいに足りないときに手伝いに行ったんだ。そしたらお礼ということで野菜をもらったんだ。規格外で売れないやつだけど新鮮なやつ。だからおいしいし、言っちゃ悪いけれど母さんがそれに味をしめちゃって、僕を巻き込むようになった。で、今は僕だけになってる」
「そうなんだ……」

 そう言って、葵は少ししんみりとした雰囲気を出した。

「どうかした?」
「……」

 気になって聞いてみたものの返ってきたのは無言。
 考え事でもしているのかな?
 それならそっとしておこう。

 そう切り変えて、僕は作業に没頭した。

「それじゃあ昼食を食べようかね」
「「はい」」
「今日はお好み焼きだよ」
「本当!?」
「もちろんさ」
「ありがとう」

 おばちゃんの声で作業を一旦止める。
 ちなみに、おばちゃんは手伝ってくれた人に昼食も振る舞ってくれている。
 それが美味しいのも母さんが味をしめた理由だ。まあ、母さんは忙しくて今は参加できていないけど。


「「「いただきます」」」

 みんなで昼食を食べ始める。
 今日のメニューはおばちゃん特製お好み焼き。
 広島風か京都風なのかは知らないけれど、とても美味しい。
 結構な人が気に入っているからか、おばちゃんは結構これを出してくれることが多い。

「大誠さん、今日のも相変わらず美味しいわ」
「そうかいそうかい、それはよかった」
「ふふふ」

 他のおばあさんがお礼を言い、それを受けたおじさんを見て、おばちゃんが笑う。
 いつもの、なんでもない農作業。

「どうだった?」

 僕は、今日初めて参加した葵に現時点での感想を聞いてみることにした。

「疲れた」
「まだ午前中なのに?」
「うん」
「まあおじさんのご飯美味しいし、今のうちに休憩しておきな」
「うん」

 といってもその美味しいご飯を葵はいつも食べられているんだよなぁ……。
 羨ましい。

 そこからも、なんでもない会話をやって、

「じゃあ続きをしようかね」

 おばちゃんの声でまた作業を始める。
 ちなみに午後まで続いていることから想像はついているかもしれないけれど、この畑、意外と大きい。
 まあそれでも、人の手を使って1日もかからないくらいだけど。


 三時半ほどになった。

「それじゃあお疲れ様。冬青くんも葵ちゃんも助かったよ。ありがとね。これが今日のお礼だよ。家族みんなで食べてね」
「はい。ありがとうございます」

 作業は無事に終わった。

「あぁ〜、づがれた〜」

 そんなふうな声を出しているのは葵。

「お疲れ様」
「ん、冬青もね。大変だった〜」

 なんかそんな葵を見ていると、柊里を見ているような気分になって……

「へ?」

 僕は、思わずしゃがんでいた葵の頭を撫でてしまった。

 ――ポトリ

 そして、透明な液体が、葵のいる地面の下に落ちた。
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