クロとシロと、時々ギン
シロヤギさんからの手紙(8)
涙がにじむ目で、どこを見るともなく辺りを眺めていると、ふと視界に見慣れた緑色が映り込んだ。緑の制服を着たシロヤギさんが、境内の隅に建つ灯籠の縁に、ちょこんと腰掛けていた。
慌てて駆け寄り、シロヤギさんを勢いよく手に取る。カサリと、いつもはしない音がした。制服と郵便鞄のほんの小さな隙間に、畳まれた紙が挟まっていたのだ。私は、それを取り出して開いてみた。
『ボクはここにいるよ shiro yagi~』
メモの最後の文字は滲んでいて、何と書いてあるのかは分からなかった。
けれど、まるで置き去りにされたシロヤギさんの心の声のような気がして、私はそれをギュッと胸に抱きしめた。
再び手元に戻ってきたシロヤギさんをしっかりと鞄にしまった私は、手の中に残った紙切れをもう一度見つめてから、鞄に入れていたノートのページの端を小さく切り取った。
『shiro yagiさんへ 見つけたよ』
いくら私が子どもだったとはいえ、メモの主が本当にシロヤギさんだとは思っていなかった。それでも、何か応えるべきだと思ったのだと思う。小さなメモを灯籠の隙間に残して、私は帰宅した。
それが、私と名も知らない友人との出会いとなった。
数日後、再び神社へ遊びに行くと、私が残したメモとは違う紙が灯籠に挟まっていた。何と書かれていたのかは覚えていないけれど、私はまた返事を書いて残した。
そうして、私と“shiro yagiさん”の風変わりな文通が始まった。
手紙の内容は些細なことだった。体育の授業が嫌だとか、ピーマンを食べないとお母さんに叱られるだとか。そんな手紙に対して、“shiro yagiさん”は、いつも励ましの返事をくれた。
そのいくつもの返事の中に、あの言葉があったのだ。
『無理しても、それは本当のきみじゃないよ』
私は、いつしか“shiro yagiさん”の手紙を心の拠り所とするようになっていた。
それなのに、ある時、パタリと返事が来なくなった。
最後の手紙には、なんと書いただろうか――。
そこまで話し終えると、白谷吟は私に問いかけた。
「それって、いつ頃の話?」
「低学年頃だと思います」
「……あのさ、僕、似たような話を知ってるんだけど」
「えっ? どういうことですか?」
白谷吟は、どこかしたり顔で私を見つめていた。
慌てて駆け寄り、シロヤギさんを勢いよく手に取る。カサリと、いつもはしない音がした。制服と郵便鞄のほんの小さな隙間に、畳まれた紙が挟まっていたのだ。私は、それを取り出して開いてみた。
『ボクはここにいるよ shiro yagi~』
メモの最後の文字は滲んでいて、何と書いてあるのかは分からなかった。
けれど、まるで置き去りにされたシロヤギさんの心の声のような気がして、私はそれをギュッと胸に抱きしめた。
再び手元に戻ってきたシロヤギさんをしっかりと鞄にしまった私は、手の中に残った紙切れをもう一度見つめてから、鞄に入れていたノートのページの端を小さく切り取った。
『shiro yagiさんへ 見つけたよ』
いくら私が子どもだったとはいえ、メモの主が本当にシロヤギさんだとは思っていなかった。それでも、何か応えるべきだと思ったのだと思う。小さなメモを灯籠の隙間に残して、私は帰宅した。
それが、私と名も知らない友人との出会いとなった。
数日後、再び神社へ遊びに行くと、私が残したメモとは違う紙が灯籠に挟まっていた。何と書かれていたのかは覚えていないけれど、私はまた返事を書いて残した。
そうして、私と“shiro yagiさん”の風変わりな文通が始まった。
手紙の内容は些細なことだった。体育の授業が嫌だとか、ピーマンを食べないとお母さんに叱られるだとか。そんな手紙に対して、“shiro yagiさん”は、いつも励ましの返事をくれた。
そのいくつもの返事の中に、あの言葉があったのだ。
『無理しても、それは本当のきみじゃないよ』
私は、いつしか“shiro yagiさん”の手紙を心の拠り所とするようになっていた。
それなのに、ある時、パタリと返事が来なくなった。
最後の手紙には、なんと書いただろうか――。
そこまで話し終えると、白谷吟は私に問いかけた。
「それって、いつ頃の話?」
「低学年頃だと思います」
「……あのさ、僕、似たような話を知ってるんだけど」
「えっ? どういうことですか?」
白谷吟は、どこかしたり顔で私を見つめていた。