クロとシロと、時々ギン

二日酔いジェラシー(7)

 シロ先輩がぺこりと頭を下げると、課長は軽く頷いて手元のパソコンへと視線を戻した。
 他者に声をかけられて冷静になったのか、シロ先輩はそれ以上何も言わなくなった。その後、シロ先輩は何事もなかったかのように仕事を再開。
 結局、不機嫌の原因が分からないまま仕事は終わってしまった。

 仕事帰りにスーパーへ寄り、食材を買う。今日のメニューは豚肉の生姜焼きにするつもりだ。
 なんだか気持ちがモヤモヤするときは、自炊でストレスを発散すると決めている。
 豚肉をどれにしようかと悩んでいると、スマホが短く鳴った。確認すると、シロ先輩からメッセージが届いていた。

“今から会えないか?”

 買い物の後は特に予定はない。
 シロ先輩とは気まずいまま会社を出てきてしまったので会いづらい。しばらく迷った末に返事を送った。

“すみません。このあと用事があるので。明日ではダメですか?”

 送信ボタンを押してから少し後悔した。断るための嘘にしては、少々ストレートすぎたかもしれない。
 シロ先輩からの返信はすぐに来た。

“そうか。まぁ、大した用事でもないから。また、明日”

 そんな淡白な文面に違和感を覚える。どうしたものかと考える。正直、まだ気まずさを引きずっていて、面と向かって話す気分ではなかった。
 けれど、シロ先輩は用事もないのに連絡してくることはしない。大したことではないと言っているが、それなりに重大な要件なのではないだろうか。
 少し考えて、返信を打つ。

“すみません。連絡をくれるということは急ぎの用事ですよね? 会社へ戻れば良いですか?”

 気になるものは仕方がない。私は会うことに決めた。
 するとすぐに返信が来た。

“予定があるんじゃないのか?”

 予定など本当はない。安直に返信してしまったことを若干後悔しつつ、文字を打ち込む。

“予定変更したので大丈夫です”

 そう送ると、すぐに既読がついた。

“じゃ、待ってる。◯◯駅を出たところにある喫茶店で”

 返ってきた文字に目を見張る。
 どうやらシロ先輩は、私の家の最寄り駅まで来ているようだった。
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