クロとシロと、時々ギン

卒業すんなよ(3)

「確かに。あの子たちのように、はしゃぐ歳ではないですね」

 運ばれてきた品に箸をつけながら、私は納得の言葉を漏らした。

 学生の頃は常に同性の友達と群れ、何がそんなにおかしいのかと思うほどキャッキャと話していたものだが、社会人になってからは、そんなふうに誰かと盛り上がることはなくなった。よく言えば、それなりに落ち着いたということなのだろう。しかし、それはそれで少し寂しいような気もする。

 でも、だからといって学生に戻りたいかと言えば、そういうわけではない。当時、常に一緒にいた友人たちの顔を思い浮かべてみても、今の自分が彼女たちとワイワイ話している姿はどうにも想像できなかった。
 今でもスマホの連絡先に彼女たちの名前は残っている。
 けれど、その中で一体何人の近況を知っているだろうか。
 卒業するたびに、交友関係はリセットされる。
 私は、いまさらながらそのことに思い至った。

「あの子たちの友情って、どのくらい続くんでしょうね?」

 ポツリとつぶやいた私の言葉に、シロ先輩は訝しそうな顔を見せた。

「なんだ? 突然」
「いえ、昔は私も友人とキャッキャしてたはずなんですよ。でも、よく考えてみたら学生の頃の友人とは、いつの間にか疎遠になっていたなぁって」
「別に良くね? 無理して付き合い続ける意味なんてないだろ」

 シロ先輩はケロリとした顔でそんなことを言う。

「まぁ、そうなんですけど。なんか、卒業したらそれで縁が切れるって、そもそも友達じゃなかったのかなぁって……。ってか、そんなこと言いつつ、私自身、自分から連絡取るわけじゃないんですけどね」

 苦笑いを浮かべる私をシロ先輩はしばらく無言で見つめていたが、やがてそっと箸を置いて口を開いた。

「クロは、その昔の友人たちと仲良くしたいのか?」
「え? いえ。そういうわけでは」

 シロ先輩の質問の意図が分からず、私は小首を傾げる。

「だよな。俺の知る限り、クロは隠れ人見知りだ。表面上は他人と上手くやっているけれど、それは当たり障りのない部分で、自分の内面を相手に見せるまでにはかなりの時間を要する」
「……えっ……まぁ、そうかも……」

 シロ先輩の私に対する分析力に、思わず目を見張る。今まで誰にも指摘されたことはなかったが、それは的を射ていた。
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