クロとシロと、時々ギン

卒業すんなよ(4)

「卒業して、それぞれ環境が変わったんだ。互いに共感できることなんて学生の頃より少なくなる。クロは、そいつらとの会話に違和感があるんだろ?」
「まぁ、そうですね」

 シロ先輩の言葉に曖昧に相槌を打つ。その分析は間違ってはいないと思う。

 学生時代の友人とは自分から連絡を取ることはないが、たまに「近況報告会」と称して突然SNSが発信されてくることがある。
 仕事で嫌なことがあった。彼氏と喧嘩した。友人の発言が納得できない。話題は本当に他愛もないことばかり。
 自分にも日常で起こり得る話題ばかりなのに、どこか共感できないものばかり。

「人見知りのお前が、心理的に距離の空いた相手と上手くやれるわけないだろ。そんなのはお前にとってストレスでしかないんだ。無理して付き合おうとするな」

 そう言い放つと、シロ先輩は再び箸を手に食事を再開した。

 言っていることは分かる。人との距離の掴み方が苦手な私は、できることなら付き合わなくていい相手とは付き合いたくない。

「でも、それでいいんでしょうか? 陰口とか言われたりしません? 付き合いが悪いとか……」

 シロ先輩の意見に全力で同意したいくせに、私はそれまでの繋がりを絶つ勇気もなく、不安げな声を出してしまう。
 そんな私に、シロ先輩は行儀悪くビシリと箸を突き付けてきた。

「それ! 俺は女子のそういう感じが嫌なんだ」
「そういう感じ?」

 意図が分からず、思わず首を傾げる。

「大体群れて騒いでる女子に限って、その場にいない奴の陰口を言うだろ? しかも公共の場でもお構いなしの大声で。こっちはそんなこと聞きたくもないのに、嫌でも耳に入ってくる。そういうのが俺は嫌なんだよ」

 心底嫌そうに顔をしかめるシロ先輩の言わんとしていることは何となく分かる。だが、それは人が集まれば必然的に起こり得ることではないだろうか。

「まぁ、公共の場では周りに配慮して話してほしいとは思いますけど。でも、その場にいない人の話題になるのって仕方なくないですか? 居ないからこそ、どうしたんだろうって話題にのぼってしまうわけで。そこから話が広がったりしますし」
「だからって、その場にいない奴をネタに盛り上がるのはおかしいだろ?」
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