優秀な後輩で私も嬉しく思うので、どうぞ『先輩離れ』してください
 壁一面の本棚には、文芸書から海外小説、詩集、古書までぎっしりと並び、所々に古時計やドライフラワーが飾られていた。木の床が軋む音さえ、心地よいBGMの一部のように感じられた。
 ふらふらと気に向くままに本の背表紙を目で追っていれば、隣にいる一ノ瀬君が迷いなく1冊の文庫本を抜き取った。

「先輩。このシリーズ、好きじゃないですか?」

 差し出された表紙を見て、驚いた。それは、私が何度も読み返している作家の初期の名作だった。

「ええ、確かに好きだけど…どうしてそこまで知ってるの?」
「先輩のデスクの引き出しの奥に入ってたの、見えちゃいました」

 悪戯っ子のような顔で平然と暴露した一ノ瀬君に、意図せず顔を顰めてしまう。

「見ないでよ」
「見る気はなかったんです。ただ、一瞬見えた表紙が忘れられなくて。根性で探して、何とか同じ本を見つけたんです。で、いざ読んでみたら面白くて」

 新作楽しみですよね、なんて続けられる言葉に唖然とした。
 いつ見たのかは知らないが、それで自分で買って読むに至るなんて。執着のようなものを感じる行動だが、なぜか不快に感じない。それどころか、彼に興味を持ってもらって嬉しいような、
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