トップアイドルは白衣の天使に恋をする
紗凪side

目が覚めたのは、まだ外が薄暗い時間。

ゆっくりと目を開けて、時計を見る。

――5時。

まだ少し眠気は残っているけど。

隣を見ると、陽貴くんはまだ眠っている。

規則正しい寝息。

穏やかな表情。

起こさないようにそっと、ベッドから抜け出す。

音を立てないように、静かに部屋を出る。

――

キッチンに立ち昨日買っておいたホットケーキミックスを取り出す。

ボウルに粉を入れて、卵を割って、牛乳を注ぐ。

しゃかしゃか、と混ぜる音。

朝の静かな空間に、やさしく響く。

フライパンを温めて、生地を流し込む。

じわっと広がる丸い形。

少しずつ焼けていく香り。

なんか、いいな…

こうやって誰かのために朝ごはんを作るの。

自然と、気持ちがあたたかくなる。

横でコーヒーも落とす。

ぽた、ぽた、と落ちる音。

その全部が、心地いい。

ひっくり返して、きれいな焼き色。

ちょうど焼き上がった、その時――

「……紗凪?」

少し寝ぼけた声。

振り向くと。

そこには、陽貴くん。

まだ眠そうで。

少しだけついた寝癖。

…かわいい

思わず、ふっと笑ってしまう。

「今日は早いね」

優しく微笑むその顔に――

胸が、ぎゅっとなる。

「一緒に朝ごはん食べようと思って」

そう言うと。

陽貴くんは、少し驚いたあと。

ふっと、やわらかく笑う。

そのまま、ゆっくり近づいてきて――

後ろから、ぎゅっと抱きしめられる。

「……っ」

一瞬、息が止まる。

背中に伝わる体温。

朝の静かな空気の中で、余計にそれがはっきりして。

「朝起きて紗凪の顔見れて、紗凪の作ったご飯食べれるとか」

少し低い、優しい声。

「幸せすぎる」


昨日より、なんだか甘い。

思わず顔が熱くなる。

「もう、できるよ」

照れ隠しみたいにそう言うと。

「うん」

すぐ後ろから優しい返事が返ってきた。
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