トップアイドルは白衣の天使に恋をする
卵サンドとコーヒーを持ってレジに並んでいると、

私の前に並んでいたおじいさんが、突然胸を押さえて倒れた。

「どうしましたか?大丈夫ですか?」

すぐに駆け寄り、意識レベルを確認する。

おじいさんの手首には入院患者用のバンドが巻かれていた。

そこには「8W」と書かれている。

8W――8階西病棟。

つまり、このおじいさんは入院中の患者さんだ。

8階西といえば循環器内科病棟。

心疾患の可能性が高い。

「紗凪!何があったの?」

すぐに梓も駆け寄ってきてくれる。

「梓、コードブルー!
それと循環器内科のドクターにもコールして!」

※コードブルー:院内で心肺停止、またはそれに準ずる緊急事態が発生した際に行われる全館放送

「了解!」

そう言って梓はPHSで連絡を入れる。

患者さんの顔色が、みるみるうちに悪くなっていく。

冷や汗も出ている。

かなり危険な状態だ。

――その時。

「何か、僕にできることはありますか?」

目の前に、ひとりの男性が立っていた。

あれ……?

この状況、どこかで――

なぜか、その人から目が離せない。

聞いたことのある声。

見覚えのある目。

確か、この人は――

「あの、大丈夫ですか?」

その一言で、はっと我に返る。

「っ……はい。
ストレッチャーに患者さんを移すので、手伝ってください」

ちょうど近くにいた医療従事者がストレッチャーを持ってきてくれた。

数人で協力し、患者さんを慎重に移す。

コードブルーの放送により、次々と医療スタッフが集まってくる。

ほどなくして、循環器内科の担当医も到着した。

ストレッチャーを押しながら、私は状況を申し送る。

「分かりました。あとはこちらで対応します。
ありがとうございました」

そう言って、患者さんは担当医とともに病棟へと運ばれていった。
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