一日の終わり、恋の始まり。
一日の終わり、恋の始まり。

金曜日の夜はいつも少しだけ気が緩む。
それでも今日は、緩む前に体力が尽きていた。


連日の残業。
今日を乗り切れば、やっと休める。
そう思ってホームに立った瞬間、アナウンスが流れた。


「雪の影響により、終電は運転を見合わせています」


小さく、息が漏れた。
隣からも、ほとんど同時にため息が聞こえる。


視線を向けると、見覚えのある人だった。
この時間の電車で、何度も見かける人。
話したことはないけれど、
いつも同じ車両に乗っている。


「……今日も、ですね」


彼が、少し困ったように笑う。


「ですね」


それだけで、気持ちが軽くなった。


名前も知らない。仕事も知らない。
それでも、同じ時間に同じ場所で
疲れているという事実だけで、
不思議と安心できた。

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