今夜、この街にあの日の流星群が降る
あたしはこっそりと新聞をカバンに入れて持ち帰った。


家に帰り、リビングにいるお母さんに「ただいま」も言わずに自分の部屋に入った。


そして、新聞を取り出した。


里堀街…。


「どうしてだろう。懐かしい気がする」


見たことも行ったことも聞いたこともないはずなのに、なぜかあたしは懐かしさを感じていた。


そして、急に頭痛がしてきた。


ズキズキと頭が痛む。


それと同時に、たった1秒だけ、不思議なことが起きた。


星空の下。


見たことない景色。


浴衣を着た男女が手を繋いで歩く姿。


体感たった1秒だったけど、今でも鮮明にあの光景を思い出せる。


「なんだったんだろう」


今、一体何が起きたのだろう。


わからないけれど、それと同時にだんだん頭の痛みが引いた。


「よかった」


あたしは新聞を引き出しの中にしまった。





「芽衣、どうかした?」


「何ぼーっとしてるんだ?」


夜ごはんを食べながらも、考えるのはさっきの出来事。


考えすぎて、箸が止まっていた。


「ううん、なんでもない」


さっきの出来事は両親には話していない。


話すつもりもない。


もしかしたら、気のせいだったかもしれないから。


「そう。ならいいけど。困ったことがあったらいつでもお母さんに話してね」


「うん、ありがとう」


それからは、しばらく考えないようにした。


夜ごはんを食べ終え、お風呂に入り、寝る準備を済ませた。


「はぁ…」


思い出さないようにしていたけど、不意にさっきの出来事を思い出してしまった。


星空の下、見たことない景色、男女が手を繋いで歩く姿…。


あたしは引き出しの中からもう一度新聞を取り出した。


この新聞を読むと、もう一度あの出来事を体験できると思ったから。


けれど、何分経っても頭に痛みは感じないし、さっきの不思議な出来事も起こらなかった。


「やっぱり気のせいか」


あたしはもう一度ため息を吐いてベッドに横になった。


そして、いつのまにかあたしは意識を手放していた。
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