アンコールはリビングで
「凪、そこの奥に更衣室があるから、着替えてくるか」

「う、うん……! ちょっと待っててね」

凪は買ってきたばかりのショップ袋を抱きしめ、逃げるようにしてカバナの奥の小さな扉へと消えていった。

カチャッ、と更衣室の鍵が閉まる音が聞こえる。

静かになったカバナの中で、俺は一人、ローテーブルに置かれていた冷たいミネラルウォーターのグラスを一気に飲み干した。

(……やべぇ。心臓の音、うるさすぎだろ、俺)

グラスを置く手が、微かに震えている。

あのネイビーの水着に着替えた凪が、もうすぐこの目の前に現れる。

二人きりの、薄暗いカバナの中で。

俺は深く息を吐き出し、これから始まる甘くて濃密な夏の夜に向けて、自分の内側で溶け出している熱を、必死に飼い慣らそうとしていた。
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