アンコールはリビングで
(……さっきまで、ゴムみたいって言いながらもち麦食べてた人が、ね)

駅に着くと、満員電車が口を開けて待っていた。

彼は島崎さん(マネージャー)の運転する快適な車でスタジオへ向かっている頃だろう。

対する私は、おじさんの整髪料の匂いと、誰かの鞄の角に押しつぶされながら会社へ向かう。

「……格差だなぁ」

吊革に掴まりながら、小さく呟く。

住む世界が違う。見ている景色も違う。
それでも、あのボロボロのスウェットを「落ち着くから」と言って着続けてくれる彼が、私の帰る場所なのだ。

電車の揺れに身を任せながら、私は今日一日のタスクを頭の中で組み立て始めた。

彼がスタジオで「神様」になるなら、私はオフィスで「戦士」になるだけだ。

そして夜には、またあのリビングで、二人で笑ってご飯を食べる。
そのために、今日も戦うのだ。

戦いのゴングは、もう鳴っている。
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