アンコールはリビングで
3. 真夏のオアシス

限界が近づいていた8月上旬。

俺はスマホのカレンダーアプリを開き、「8月7日」という日付をタップした。
凪さんの誕生日だ。

ゆっくりデートをする時間はない。プレゼントを選ぶ余裕もない。
でも、先日俺の背中を押してくれた彼女に、何か返したい。

「おめでとう」の一言だけでも、直接伝えたい。

俺は震える指でメッセージを送った。

『凪さん、ご無沙汰しています。早瀬です。突然ですみません。8月7日の夜、もし空いていたら、少しだけお祝いさせてもらえませんか?』

送信ボタンを押してから数分。
スマホが震えた。

『久しぶり。元気にしてたかな?その日、空いてるよ!早瀬くんに会えるの、楽しみにしてるね』

その温かい文面を見た瞬間、俺は思わずデスクに突っ伏した。

ガッツポーズをする気力すら残っていなかったが、心の奥底から生きる気力が湧いてくるのを感じた。

これで、あと数日は生き延びられる。

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