アンコールはリビングで
「……っていうのは嘘で。正直、かなりキツいっす……」

俺は観念して、白状した。

6月の誕生日に背中を押してもらってから、今日までの怒涛の日々。
会社と音楽の両立。睡眠不足。プレッシャー。

そして最後に、一番言いたかった本音が、ポロリと口から零れ落ちた。

「……それに、何より凪さんに会えなかったんで……」

「……え?」

「あ、いや! 路上ライブできなくて、ファンの方に会えないのが寂しいなって!」

俺は慌てて誤魔化したが、口に出してしまった本音は消えない。

凪さんは心配そうに眉を寄せて俺を見つめた。
その瞳に、俺の憔悴しきった顔が映っている。

「そっか……。本当にお疲れ様。体調、大丈夫……? こんな顔した早瀬くん初めて見たから、すごく心配だよ」

その心底心配してくれている声色が、渇いた心にじわりと染み渡る。
あぁ、この優しさが欲しかったんだ。

「……私の方もね、いつも通り仕事でバタバタしてたけど……」

凪さんはカヴァのグラスを指先でつつきながら、少し困ったように笑った。

「あんなに毎週のように早瀬くんと会ってたから……なんか、金曜の夜、予定ないのに早く帰ったりして。ぽっかり心に穴が開いちゃったみたいだったよ」

「……!」

その言葉に、俺の心臓が大きく跳ねた。

彼女も、俺と同じように寂しさを感じてくれていたのか。
ただのファンとしてではなく、日常の一部として、俺の不在を感じてくれていた。

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