アンコールはリビングで
「……何それ。超嬉しいんですけど……」

思考がそのまま言葉になって漏れていた。
ハッとして口を噤むが、もう遅い。

凪さんが驚いたように目を丸くし、それから微かに頬を染めて視線を逸らした。

「……え、あ、いや……変な意味じゃなくてね?」

彼女のその反応が、さらに俺の理性を揺さぶる。
このままじゃ、嬉しさで溶けてしまいそうだ。

「……凪さん」

「ん?」

「またこの前みたいに、たまに電話してもいいっすか……?」

これ以上会えない日々が続けば、俺は本当に干からびてしまう。
せめて声だけでも。その願いを込めて訊ねると、彼女はハッとして、それから嬉しそうに目を細めた。

「……! もちろん! 私もお話ししたいし……いつでもかけてきてね」

「……ありがとうございます。生き返りました」

「ふふ、大袈裟だなぁ。……あ、そうだ!」

彼女は思い出したように、グラスを掲げ直した。

「この前は電話でしか言えなかったけど……早瀬くんの新しい門出、改めてお祝いしないとね!随分遅くなっちゃったけど……お誕生日とデビュー決定、本当におめでとう!」

「……っ、ありがとうございます」

カチン、とグラスが鳴る。

真夏の夜のスペインバル。
彼女の笑顔と、冷えたカヴァの味。

それは、どんな高級なディナーよりも贅沢な、俺へのご褒美だった。

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