アンコールはリビングで
「へぇ……凪さん、すごい。今の、ドビュッシーですよね?」

試弾用のピアノの前で彼が見下ろしている。

ただの春の私服姿なんだけど、楽器屋のスポットライトの下に立つ彼は絵になりすぎていて、周りの女性客がチラチラとこちらを見ているのが分かる。

私も少し、見惚れてしまう。

「あ、ごめん! なんか懐かしくて、つい……!」

「素敵な演奏聴かせてもらってありがとうございます。俺も聴き入っちゃいました……ピアノ、相当やってたんすね」

「うん。昔、発表会で弾かされたやつ。……指、まだ覚えてるもんだね……でも久しぶりに弾いたから、指も鈍っちゃってて……酷いものだよ」

私は照れながら苦笑いをして、鍵盤を愛おしく撫でた。

「子供の頃、このBostonのアップライトピアノ……初めて聴いた時、びっくりしちゃって。私には今までのピアノと全然違う音に聞こえたんだ……特に高音……キラキラしててね、音が輝いてた」

「うん、すごく綺麗な音でしたね」

彼が温かい相槌を打ってくれるので、私はつい話し込んでしまう。

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