アンコールはリビングで
「このピアノが絶対いい!って初めてあんなにわがまま言ったかも……高価なものだったから、両親もすごく悩んでたけど……もともと音楽好きな父母だったからね、理解はしてくれて……」

彼は私が話す間、ずっと優しい瞳で見つめてくれていた。
その視線が嬉しくて、言葉が止まらなくなる。

「今から10歳までの誕生日プレゼントの代わりだぞって。なんとか買ってもらったんだよね……ほんと。今考えるとそんな数回のプレゼント代では全然足りないのにね。ありがたい限りだったよ……」

ハッと気づき、私は口元を押さえた。

「……うわ。めっちゃ自分語りしちゃった……ごめん。デートなのになんか、わたしの昔話ばっかりで……」

「え。何言ってんですか。すっげぇ楽しいですよ?」

彼は屈み込み、私と視線を合わせた。
琥珀色の瞳が、真っ直ぐに私を射抜く。

「こうやって凪さんの耳は作られてきたのか、って思って。このピアノの音と、ご両親が好きだった音楽が、凪さんのベースにはあるんですね……凪さんの話、もっと聴かせてくださいよ」

「……ありがとう。でも、また今度聞いて? 私も早瀬くんの話を聞きたいな」

私ははにかみながら立ち上がった。
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