アンコールはリビングで
『ポーン』と澄んだ音が鳴り、エレベーターの扉が開く。

「わぁ……」

眼下に広がっていたのは、宝石を散りばめたような東京の夜景だった。

吹き抜ける春の夜風が少し冷たくて、凪さんが小さく身をすくめる。
俺はすかさず風上に立ち、自分の着ているコートごと、彼女の盾になるように立ち塞がった。

「あっ……ありがとう」

見上げてくる彼女の瞳に、夜景の光がキラキラと反射している。

もう、これ以上は待てなかった。

これからの人生で、彼女のあらゆる表情を一番近くで見続けるのは、絶対に俺でなければならない。

俺は足を止め、ゆっくりと彼女に向き直った。

「……凪さん。聞いてほしいことがあります」


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