アンコールはリビングで
5.覚悟の告白

俺の声は、自分でも驚くほど低く、硬かった。

「誕生日の夜にも聞いてもらいましたけど……いよいよ今月末で、正式に会社を退職します。来月からは白井不動産っていう肩書きも、毎月の安定した給料もなくなって……島崎さんとゼロから、ただの無名のミュージシャンとしてのスタートです」

凪さんは驚いたように目を丸くしたが、すぐにその瞳に静かな光を宿し、俺をまっすぐに見つめ返してくれた。

「……正直、こんな何の後ろ盾もないタイミングで凪さんに想いを伝えるなんて、男としてどうなんだって、自分でも思いました。今の俺には、凪さんに誇れるような安定なんて何一つないから」

言葉を切ると、屋上を吹き抜ける風の音だけが聞こえた。

俺は小さく息を吸い込み、ずっと胸の奥で温めてきた本音を吐き出す。

「……怖くないって言ったら嘘になります。でも、あの夜、凪さんが俺の歌を『人生で1番好き』って言ってくれた。俺の歌に『救われた』って言ってくれた……あの言葉が、俺の背中をずっと押し続けてるんです」

俺は、彼女へと一歩踏み出した。
靴音が、静かな屋上に響く。

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