アンコールはリビングで
3. 息を呑む引力

「次は湊の服、見に行こっか。春物のジャケットとか欲しいって言ってたよね?」

私の提案で、今度はハイブランドのメンズブティックへと足を踏み入れた。

落ち着いた照明の店内を見渡し、私は一着のテーラードジャケットを見つけた。カチッとしすぎないリネン混のナチュラルな素材感で、色は絶妙なスレートグレー。

「これ、湊に絶対似合うと思う。着てみて?」

「ん。じゃあ、ちょっと着てみるわ」

湊は頷くと、羽織っていたオーバーサイズのコートを脱ぎ、店員からジャケットを受け取った。

白のハイゲージニット越しに、鍛え上げられた広い肩幅と厚い胸板のシルエットが露わになる。
彼が長い腕を袖に通し、フロントのボタンを開けたまま、軽く肩を回して生地を馴染ませた。

そして、鏡の前に立ち、乱れた前髪を無造作にかき上げながら、伊達メガネの位置をスッと直す。

「……」

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