アンコールはリビングで
3. 始まりの扉と、アンコール

足早に逃げ込んだのは、華やかなショッピングモールの裏側。
『関係者以外立入禁止』の看板のすぐ手前にある、重厚な鉄の防火扉だ。

重い扉を両手で押し開けると、外の喧騒が嘘のように遮断された、ひんやりと薄暗い静寂の空間に出た。

無機質なコンクリートの壁。薄暗い非常灯。

ここは、4年前のあの夜、私たちが初めて心を通わせた始まりの場所、『非常階段』だ。

「……はぁ、はぁ……っ、焦ったぁ……」

「……凪、ナイス」

息を切らしながら、私たちはコンクリートの壁にもたれて笑い合った。
湊が伊達メガネを外し、乱れた前髪を無造作にかき上げる。そして、ニヤリと口角を上げた。

「それにしても……『はーくん』? なにさっきの。反則だろ」

「ち、違うよ! 咄嗟にバレないようにバカップルのフリをしただけで……!」

「ふーん?でもめっちゃ可愛かった。俺、アレ普通に興奮したんだけど。……家帰ったらもう一回やって」

「バカッ! やるわけないでしょ!」

私が顔を真っ赤にして抗議すると、湊は喉の奥でくくっと低く笑い、階段の冷たい手すりに寄りかかった。

そして、あの夜と同じように、無機質なコンクリートの壁を懐かしそうに見上げた。

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