アンコールはリビングで
3. 三ツ星の晩餐

「……ただいまー……」

玄関に出迎えると、黒いキャップを深く被り、黒のマスクをした湊が、肩を落として壁にもたれかかっていた。

「あっ、湊。おかえり!」

エプロン姿のまま駆け寄ると、湊はゆっくりと顔を上げ、長い溜息を吐いた。
連日のプロモーションとツアー準備で、彼の疲労はピークに達しているはずだ。

「……あー、疲れた。今日マジで何時間歌ってたか分かんねぇ……」

ぼやきながら重い靴を脱ぎ、リビングへと足を踏み入れた湊の動きが、ふと止まった。
彼の視線が、ダイニングテーブルの上に美しく並べられたご馳走の数々に釘付けになる。

「……うわ」

キャップとマスクを無造作に外し、彼の琥珀色の瞳がパッと輝きを取り戻した。

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