アンコールはリビングで
私が視界を滲ませながら彼の胸に飛び込むと、湊は力強い腕で私をすっぽりと包み込んだ。

「……泣くなって。4年経っても、俺のベクトルは凪にしか向いてねぇよ」

背中に回された手のひらが、私の体温をさらに上げていく。

彼の手首にあるプラチナが私の背中に触れ、私の手首にあるプラチナが彼の首筋に触れる。
冷たい金属と、熱い体温のコントラストが、今私たちが確かに繋がり合っていることを教えてくれる。

「……今日は金曜だし。……明日、休みだろ?」

耳元に落ちた声は、さっきまでの甘えん坊の犬から、完全に『大人の男』のそれへと変わっていた。

私を抱きしめる腕の力が強くなり、逃げ場のない熱がハッキリと伝わってくる。

「……うん」

「……今日はもう、絶対寝かさねぇから。覚悟しとけよ」

重なる唇。

最初は確かめるような優しい触れ合いだったものが、すぐに理性を手放した熱を帯びた深い口付けへと変わっていく。

甘く溶けるような息継ぎの隙間すら惜しむように、幾度も重なり合う唇の熱に、私はただ彼の首に腕を回してしがみつくことしかできない。

プラチナの冷たい輝きとは裏腹に、リビングの温度は溶けそうなほどに上がり、私たちはソファから零れ落ちるようにして、深く、長い夜の底へと沈んでいった。
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