アンコールはリビングで
(……寂しいなぁ)

膝に埋めた顔の奥で、小さくため息が漏れる。

最近ハマっていた腸内環境を整えるための健康系の動画も、見たいものは全て見尽くしてしまった。
湊のドラマの原作小説だって、彼が読んでいるペースをとうに超えて、既刊をすべて読み終わってしまった。

時間を潰すためのツールはいくらでも転がっているのに、どんな情報を取り入れても、心の中にぽっかりと空いた穴が少しも埋まらない。

ただ単純に、湊分の『充電』が足りていないのだ。

触れる体温、匂い、低くて甘い声。
それらが極端に不足しているせいで、呼吸が浅くなり、胸の奥が冷たく軋むような感覚がずっと続いている。

私でさえこんなに息苦しいのだから、当の本人はどれだけ限界に近い状態なのだろう。

そう思うと、寂しさよりも心配が勝って、さらに胸が苦しくなった。

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