アンコールはリビングで
番組は、彼の幼少期の少し画質の粗い90年代のホームビデオ風の再現映像と、現在の彼の落ち着いたインタビュー映像を交錯させながら進んでいった。

『ギターに触れたのは、6つ上の兄の影響です。最初はただの遊びだったんですけど……耳で聴いた音がそのまま指板で拾えるのが、なんだか面白くて』

画面の中で、黒いシャツを着た湊が淡々と語る。
10歳でアコースティックギターに出会った彼は、持ち前の耳の良さで瞬く間にコードを習得していったらしい。

『でも、中学に入ってすぐ声変わりが来て、自分が歌いたいように歌えなくなった時期があったんです。……それがすごくもどかしくて。だから、歌えないならギター一本で全部表現してみよう、と』

そこから紹介されたのは、彼が没頭したという『ソロ・ギター(フィンガースタイル)』の世界だった。

メロディ、リズム、ベースラインを一本のギターで同時に奏でる奏法。さらに弦を叩いてドラムのような音を出すパーカッシブな技術。

番組のナレーションが、「指から血が滲むほどの猛練習の末に、彼は中学生にして超絶技巧の基礎を完成させた」と語り、私は思わず自分の指先をギュッと握りしめた。

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